抄録
症例は66歳,男性. 6年前,左尿管腫瘍のため左腎臓及び左尿管摘出術を施行,一年後,膀胱に再発を認め, 70Gyの外照射を実施.腹部膨満感,下腹部痛を主訴とし,イレウス状態にて当院入院となった.注腸造影, CT,内視鏡検査にてS状結腸-Rs部に全周性狭窄,潰瘍形成を認め,放射線直腸炎の診断にて低位前方切除術を施行した.患者は順調な経過にて退院後,現在良好な社会生活を送っている.この10年間に報告された外科的治療を受けた放射線直腸炎273症例の検討では,本症例のような括約筋温存直腸切除術が施行される例は少なく,前方切除術4例, pull through術7例であった.放射線直腸炎は血管変化を伴う虚血性病変であるため,術前の血管造影,術中の迅速病理検査は必要であり,患者のquality of lifeの向上に留意し,括約筋温存術式を志向すべきと考える.