抄録
近年,癌の診断技術の向上により重複癌の発見が増加している.そこで,原発性肝細胞癌症例に注目し肝と他臓器の重複癌症例について検討した..当科で最近10年間に経験した原発性肝癌207例中,肝と他臓器の重複癌症例は6例(2.9%)であった.性別・年齢は,男性3例女性3例,平均年齢69歳であった. 6例はすべて同時性重複癌であり,原発性肝癌との組合せは早期胃癌4例・肺癌1例・大腸癌1例であった.肝癌に対する手術としては肝左葉切除術1例,肝部分切除術2例,腫瘍核出術1例,肝動脈挿管術1例であった.両癌とも一期的に切除可能であったのは胃切除術の行われた早期胃癌の1例のみであり,早期胃癌1例と肺癌1例は二期的に切除が行われた.予後は平均11カ月であった.術後28カ月生存中である1例を除き,他の5例はすべて肝癌死および肝不全死しており,同時性肝重複癌の予後は原発性肝癌の予後により規定された.