抄録
大網脂肪織炎は極めて稀な疾患であり,報告例は非常に少ない.われわれは術前に大網腫瘍の診断で切除し,組織学的検査にて大網脂肪織炎と診断された1例を経験したので報告した.症例は58歳の男性.上腹部の腫瘤を主訴に来院した.既往歴に4歳頃馬に腹部を蹴られたことがある.右季肋部から臍部にかけて14×10cmの表面平滑な弾性硬の腫瘤を触知し,用手的に左上腹部に移動できた.腹腔動脈造影で右胃大網動脈の拡張を認めたが,壁の不整,狭窄,腫瘍濃染像は認めなかった.大網腫瘍の診断で腫瘍摘出及び胃部分切除術を施行した.腫瘍は10×10×12cmで表面平滑な被膜で覆われており,胃とは強固に癒着していた.割面は充実性部分と嚢胞性部分が混在していた.組織学的検査で炎症細胞と線維芽細胞の増殖を伴う脂肪織炎と診断された.原因は明らかではないが,幼児期の外傷に起因したものと推測された.