抄録
当院における多剤耐性の黄色ブドウ球菌の検出動向とそれによる感染症を検討した.対象は1985~90年の入院と外来患者の資料であり,多剤耐性黄色ブドウ球菌は4系統以上の抗生剤に耐性の菌と定義した.感受性様式,生化学型と検出日から院内感染を推察した.
全保菌者の80%が一般外科 (A) 病棟と専門外科 (B) 病棟に在院した.院内伝播例は, A病棟内で4組,隣接するB病棟内で9組あり,両病棟を交叉して6組あった.伝播経路としては,痰で排菌された後の拡散が疑われた. 2病棟で菌検出までの抗生物質投与日数は同等 (p>0.05) であったが,第3世代セフェム系剤の使用量がB病棟できわだって (p<0.01) 多かった.死亡例では,感性の残っている薬剤投与にて腎不全を生じた患者があった.
以上より,広域スペクトラムの抗生剤の使用に注意して菌発生を未然に防ぎ,痰に保菌する患者は蔓延を予防することが望ましい.