抄録
原発性乳癌124例を対象とし,第VIII因子関連抗原染色にElastica van Gieson (El. v. G.) 染色を併用して乳癌の血管侵襲を検索した.全症例のv (+) は43.5%であり, v (+) 例の10生率は48.1%と不良であった.一方v (-) 例の10生率は75.7%と良好であった (p<0.002). 乳頭腺管癌のv (+) は23.3%であり,充実腺管癌の49.0%, 硬癌の56.7%に比べ有意に低かった (p<0.03, p<0.01). 乳頭腺管癌でもv (+) の10生率は42.9%で, v (-) 例の91.3%に比べ予後不良となった (p<0.006). n (-) 例のv (+) は29.7%であったが, n (+) 例では58.3%と高く有意差が認められた (p<0.002). n (-) 例でもv (+) の10生率は63.2%で, v (-) 例の93.3%に比べ予後不良となった (p<0.003). 血管侵襲はn (-)例のhigh risk factorの一つであると考えられた.第VIII因子関連抗原染色にEl. v. G. 染色を併用した方法は血管侵襲の検索に有用であり,血管侵襲は重要な予後因子になることが示唆された.