日本臨床外科医学会雑誌
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同時性肝転移をきたした胃平滑筋芽細胞腫の1例
北川 雄一田近 徹也亀岡 伸樹神田 侑幸渡邊 智仁三浦 敦寺本 誉男政井 治
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1996 年 57 巻 2 号 p. 384-388

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抄録
患者は62歳,男性. 1994年1月末頃より腹部腫瘤に気付き, 2月22日に腹部腫瘤・左上腹部痛を主訴に来院. CT・USで左上腹部の径約30cmの不整な内部構造を有する嚢胞性腫瘤と,肝に多発する嚢胞性腫瘤を認めた.上腹部腫瘤の穿刺細胞診では,空胞を有する円形細胞を認めた.圧迫症状が強いため手術を施行.腫瘍は胃壁より発育しており,多発肝転移も認めた.胃部分切除を伴う腫瘍摘出と,動注リザーバー挿入を施行.病理組織学的に空胞を伴う円形細胞を認め,平滑筋芽細胞腫と診断. PCNA染色も陽性.術後化学療法を施行したが,転移巣は増大し,術後13カ月で死亡.剖検では肝以外の転移巣はなく,肝は病理組織学的に胃と同一の細胞を認めた.胃平滑筋芽細胞腫肝転移例15例の検討では,平均生存期間が約1年と極めて予後不良であった.肝転移を伴う腹腔内の巨大嚢胞を認めた場合でも,本症を念頭におくべきである.
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