日本臨床外科医学会雑誌
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腹腔鏡下胆嚢摘出術術後に発症した肺塞栓症の1例
木下 敬弘佐藤 博文山脇 優神林 清作小島 路久
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1997 年 58 巻 2 号 p. 350-353

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抄録

腹腔鏡下胆嚢摘出術術後に発症し,気腹が原因と思われる肺塞栓症の1例を経験した.症例は46歳の女性で腹腔鏡下胆嚢摘出術術後最初のトイレ歩行時に呼吸困難で発症した.動脈血ガス分析でPaO2が47.6mmHgと著明な低酸素血症を示した.肺塞栓症を疑いヘパリン1万単位/日による抗凝固療法を行った.発症直後の肺シンチグラムでは左S8,右S10に区域性の血流欠損を認めた.治療開始後,症状は軽快し8日後には退院となった.
気腹が下肢静脈血栓を誘発し,肺塞栓症をきたし得ると言う懸念は以前より持たれていた.肺塞栓症は術後早期発見,早期治療が予後を左右するため,腹腔鏡下手術の術後合併症の1つとして常に念頭に置くことと, high risk症例に対する十分な予防対策が重要である.

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