肺塞栓症は,消化器外科領域において,稀ではあるが,一旦発症すると死に至ることの多い重大な術後合併症である.今回われわれは,短期間に2例の術後肺塞栓症を経験したので報告する.
症例1: 60歳男性.進行胃癌に対し幽門側胃切除術施行.第2病日の歩行時に腹痛,呼吸困難を訴えた後,心肺停止となった.蘇生術により蘇生し,諸検査より肺塞栓症と診断し,抗血栓療法を行ったが,多臓器不全となり,第23病日に永眠した.
症例2: 59歳男性.早期胃癌に対し幽門側胃切除術施行.第1病日の歩行時,突然腹痛を訴え,ショック状態となった.諸検査より肺塞栓症を疑い,肺血流シンチグラムで診断を確定した後,抗血栓療法を行い,回復した.
2例の苦い経験より,現在当科では,波動型末梢循環促進装置を術中に用いて,術後肺塞栓症の予防に努めている.