日本臨床外科医学会雑誌
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鈍的腹部外傷後の小腸狭窄によるイレウスの1例
茂原 淳棚橋 美文池谷 俊郎堀口 淳澤田 富男饗場 庄一塩崎 秀郎横江 隆夫飯野 佑一小川 哲史大和田 進森下 靖雄
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1997 年 58 巻 2 号 p. 402-405

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抄録

イレウスの稀な原因として鈍的腹部外傷後の小腸狭窄がある.今回,受傷後約10日目に発症したイレウスに対し,手術を施行した小腸狭窄の1例を経験したので自験例を含めた本邦報告例について検討した.症例は51歳男性.左側腹部を殴打され,腹痛が続くため,当院を受診した.外傷性膵炎の疑いで入院したが,保存的治療で軽快退院した.再び嘔気,嘔吐を伴う腹痛が出現し,イレウスの診断で再入院となった.小腸造影で,外傷性小腸狭窄と診断し,手術を行った. Treitz靱帯から約170cmの小腸が肥厚し,狭くなっており,同部に口側の小腸および大網が癒着していた.狭窄部小腸を切除後端側吻合した.組織学的には,空腸の全層性の損傷による狭窄がイレウスの原因であった.鈍的腹部外傷後比較的早期にイレウス症状を呈する患者では,外傷性狭窄が発症の原因となることを念頭に置き,対処することが必要である.

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