日本臨床外科学会雑誌
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術前診断に腹部超音波およびCT検査が有用であった回腸悪性リンパ腫による成人腸重積の1例
岩上 栄清水 淳三川浦 幸光
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1998 年 59 巻 1 号 p. 150-154

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抄録

術前の腹部超音波, CT,注腸検査で腸重積と診断し治療しえた回腸原発悪性リンパ腫による成人型腸重積の1例を経験した.症例は53歳,男性で主訴は腹痛.入院時血液検査でHb 10.7g/dlと貧血を認めたが,腫瘍マーカーはCEA, CA19-9も正常範囲であった.腹部USでは横断像でtarget signを縦断像でhay fork signを伴う腸重積を認め,先進部は均一な低エコーな腫瘍であった.腹部CT検査では回盲部から上行結腸に約12cmにかけて腸重積を認め,先進部にはエンハンスされない内部均一な腫瘍が疑われた.注腸造影では上行結腸にカニ爪状の陰影欠損を認め回腸・結腸型の腸重積像を認めた.重積先進部の陰影欠損は表面平滑で粘膜下腫瘍が疑われ,周辺の粘膜には著明なリンパ濾胞を多数認めた.以上より,悪性の回腸粘膜下腫瘍を先進部とした腸重積と診断し手術施行した.回腸腫瘍を先進部とする回腸・結腸型の腸重積を認め腸間膜にはリンパ節の腫大を認めたため重積部を含めた回盲部切除術,第2群リンパ節郭清術を施行した.腫瘤はBauhin弁から10cmに大きさ径5.1×3.5×1.8cmで周囲の粘膜は粗造であった.病理組織学的検査は悪性リンパ腫で, non-Hodgkin B cell, diffuse, medium-sized cellであった.また, NO.201, 202のリンパ節に転移を認めた.術後に化学療法としてCHOPを4クール施行し現在再発を認めていない.

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