日本臨床外科学会雑誌
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心転移をきたした顎下腺悪性多形腺腫の1例
岩田 広治岩瀬 弘敬遠山 竜也原 泰夫大本 陽子小林 俊三
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キーワード: 悪性多形腺腫, 心転移
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1998 年 59 巻 1 号 p. 65-69

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抄録

症例は61歳女性,右顎下部の急速増大する腫瘍を主訴に来院した.臨床所見, CT, MRIおよび血管造影にて悪性顎下腺腫瘍と診断し腫瘍切除術を施行した.しかし総頸動脈,内頸静脈への腫瘍浸潤のために,腫瘍の一部が切除不可能であった.切除腫瘍の大きさは17.6×10.7×9.5cmで,重量は960gであった.病理組織学的に悪性多形腺腫と診断され,残存腫瘍は53Gyの放射線照射によりわずかに縮小した.しかし術後74日目に超音波エコーにて心内腫瘍が発見され,心嚢水の細胞診で悪性腫瘍が同定されたことより,悪性多形腺腫の心筋内転移と診断された.その後の化学療法は効果なく,患者は残存腫瘍の増大と全身状態の悪化により,術後221日目に死亡した.心転移を来した悪性多形腺腫の非常に稀な1例である.

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