1998 年 59 巻 1 号 p. 99-103
急性咽喉頭炎または口腔底蜂巣炎からいわゆる降下性壊死性縦隔炎を併発した2症例に対し,積極的なドレナージ・洗浄療法を施行し治癒せしめえたので報告する.症例は59歳男性で,膿瘍は気管・気管分岐部周囲を取り囲み,右前上縦隔に塊状に形成され,下方は後縦隔に降下し,両側膿胸も伴っていた.他の1例は23歳男性で,顕著な気縦隔が特徴的で,膿胸に加え,化膿性心膜炎による心タンポナーデ症状を認めた.これら2例に対し,抗菌剤投与に加えて,胸骨正中切開による縦隔ドレナージや心嚢ドレナージ,または肋間からの胸腔ドレナージ,さらに膿瘍腔洗浄療法を併用し治癒せしめえた.抗菌剤療法に抵抗し増悪する症例に対し,膿瘍の降下経路を充分にドレナージすることが良好な結果に結びつくと考える.