日本臨床外科学会雑誌
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特発性腹直筋血腫の1例
蜂須賀 康己三好 明文福原 稔之船津 隆小林 展章
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1998 年 59 巻 12 号 p. 3158-3162

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抄録

咳漱が誘因となって発症したと思われる特発性腹直筋血腫の1例を経験した.症例は72歳,女性.咳をした直後,突然,右腹部痛,嘔気が出現し来院.右腹部全体に圧痛と,腹膜刺激症状を認めたが,左側に所見なし.腹部CTにて,右腹直筋鞘内にレンズ状の腫瘤像を認め,右腹直筋血腫と診断.保存的治療にて約40日で軽快した.最近10年間における本邦報告例, 37例について臨床像を検討した.本症は,比較的稀な疾患であり,平均年齢58.6歳で女性が78.4%を占める.腹膜刺激症状を認めることが多いが,原則的には保存的治療が可能である.診断の際に,本症を念頭に置かないと腹腔内病変と誤診し,不必要な開腹手術となることがある.腹部US, CTおよび, MRIは本症の診断に極めて有用であり,本症例においても不必要な開腹手術を回避することができた.

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