日本臨床外科学会雑誌
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直腸癌低位前方切除術後,長期生存例のquality of life
筒井 完山口 浩史佐々木 一晃平田 公一
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1998 年 59 巻 2 号 p. 361-367

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抄録

低位前方切除術後1年以上15年未満の長期生存例についてアンケート調査を行い(回答率96.7%), 89例について排便障害を中心としquality of life (QOL)を検討した.歯状線~吻合線間距離でみると,排便回数は2cm, 5cmそれぞれ4.3±1.6回, 2.9±0.9回(p<0.02), soilingは2cm 69.2%, 4cm 23.7% (p=0.009), 5cm 19.2% (p=0.003),下剤の使用は2cm 69.2%, 5cm 30.8% (p=0,026) で有意差を認めたが,便とガスの識別,残便感は有意差が無く,排便障害は直腸complianceの低下と口側結腸の授動操作に基因する腸管運動異常が関係すると推測した.戸外活動,宿泊旅行の参加では有意差は無かったが2cmで支障が増す傾向が認められた.手術結果に対する患者の評価は満足,おおむね満足計87.60%,やや不満12.4%で,後者は2cmで多い傾向を認め,郭清と無関係に頻回排便が理由で多かった.本術式は一般に満足度が高いが吻合が低位の場合,貯溜嚢造設がQOLに役立つと考えられた.

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