日本臨床外科学会雑誌
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膵前十二指腸後門脈の1例
安井 元司角尾 英男中原 秀也浅野 倫雄藤田 治樹
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1998 年 59 巻 2 号 p. 526-531

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抄録

偶然診断された門脈走行異常の1例を経験したので発生学的考察を加えて報告する.症例は65歳,男性.大腸癌検診で便潜血反応陽性を指摘され,精査の結果盲腸癌と診断された.術前精査中にUSおよびCT検査にて肝門部で蛇行する門脈を認め,肝内ヘタコ足状に分岐していた.腹腔動脈造影にて異常なく,門脈造影にて膵下縁で右方に偏位し, L字型を示し,膵上縁で左右に分岐していた.開腹時左右門脈は総胆管の腹側を走行し,十二指腸球部後面を通り,膵頭部の前面を走行していた.門脈走行異常を伴った盲腸癌の診断にて,平成7年8月31日結腸右半切除を行った.肝十二指腸間膜において門脈は右枝左枝ともに総胆管の腹側を走行し,十二指腸後面を走行していた.肝の形態異常・胆嚢の位置異常を認めなかった.術中門脈圧は130mmH2Oであった.発生学的には膵前十二指腸後門脈と考えられ,文献上3例あり, 4例目と考えられ,極めてまれである.

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