抄録
内ヘルニアの中でも極めてまれな疾患とされるWinslow孔ヘルニアの1例を経験したので文献的考察を加え報告する.
症例は25歳女性.平成7年8月6日上腹部痛にて発症し入院,経過観察していたが8月8日腹痛増強し,腹部単純X線写真像で小腸ガスの増大を認めたため絞扼性イレウスの診断のもとに緊急手術を施行した.開腹所見では小腸ほぼ中央部がWinslow孔を通過し網嚢峡部に嵌頓していた.網嚢峡部の一部を切開し開放したところ嵌頓は解除され,整復とともに小腸の血行は改善したので小腸切除は不要であった. Winslow孔を三針縫合閉鎖しイレウス管を留置し手術を終了した.術後経過良好で再発は認めていない.本症例では術前診断はできなかったが本疾患を強く示唆する肝十二指腸間膜背側を通過する腸管像が術前の腹部CTおよび腹部USにて認められており,当初から本疾患を念頭においていれば術前診断は可能であったと思われた.