日本臨床外科学会雑誌
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大腸低分化腺癌の臨床病理学的検討
佐藤 美信丸田 守人前田 耕太郎内海 俊明遠山 邦宏奥村 嘉浩升森 宏次小出 欣和松本 昌久黒田 誠
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1998 年 59 巻 5 号 p. 1214-1221

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抄録

1988年から9年間に当科で経験した多発癌を除く,原発巣を切除した低分化腺癌21例の臨床病理学的特徴について,高分化腺癌472例,中分化腺癌162例と比較検討した.低分化腺癌の占居部位は高分化腺癌,中分化腺癌に比べて右半結腸に多かった.低分化腺癌の壁深達度は85.7%がseまたはa2以上で, 28.6%がn3以上の進行例であった.また66.7%がDukesC以上, 57.1%がstage3b以上の進行例で,いずれも高分化腺癌に比べて有意に高率であった.低分化腺癌の肝・肺転移の占める割合は高分化腺癌,中分化腺癌と差を認めなかったが,原発巣手術時,再発時で腹膜播種が多かった.低分化腺癌の71.4%で根治度Aの手術が可能で,これらの5年生存率は77.8%で,高分化腺癌,中分化腺癌と差がなかった.低分化腺癌は発見時には局所進展およびリンパ節転移において進行例を多く認めるが,十分なリンパ郭清を含む切除手術により長期生存が得られるものと考えられた.

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