ほぼ全域が壊死に陥った葉状腫瘍は極めて稀であるが,その2例を経験したので報告する.症例1は53歳女性.右乳房の7.0×6.Ocm大の緊満弾性,境界明瞭,可動性良好な有痛性腫瘤を主訴とし来院.皮膚に著明な発赤を認め癌を疑った.しかしmammography, 超音波検査で癌特有の所見を欠き,術中病理診断で良性の腫瘍と診断されたため,腫瘍を含めて大きく切除した.症例2は19歳女性,左乳房の2.5×2.2cm大の境界不明瞭な有痛性腫瘤を主訴とし来院. mammography, 超音波検査では腫瘤が検出されず,局所麻酔下に腫瘍摘出術を行った.いずれも病理組織学的にほぼ全域が壊死に陥った葉状腫瘍であった.広範囲の壊死を伴う乳腺葉状腫瘍はphysicalに癌と類似所見を呈するが,補助診断法で癌特有の所見を呈さないため通常の手順で診断を進めばよい.葉状腫瘍の壊死の可能性を知ればその診断がより容易となる.