1998 年 59 巻 5 号 p. 1286-1289
症例は67歳,男性で,気管支喘息および慢性肺気腫による呼吸不全のため,当院呼吸器科に入院中,突然,腹痛が出現,出血性ショック状態に陥ったため,緊急上部消化管内視鏡を施行したが,特に出血を疑わせる所見はなかった.腹部造影CT上,腹腔内および肝被膜下への造影剤の漏出を認め,肝実質からの出血が疑われたため,緊急血管造影を施行した.右胃動脈に3個の動脈瘤が存在し,この1つから腹腔内への出血を認めた.止血用コイルによるTAEを施行し,止血が確認できたが, 1時間後再出血をきたしたため,緊急開腹術を施行し,右胃動脈瘤を含め,右胃動脈を約3cm切除した.
胃動脈瘤破裂の報告は自験例も含め, 24例であり,ほとんどが開腹術を施行されている.しかし,全身状態が低下している患者に対してはTAEおよび血管造影が第一選択となる場合もあると考えられる.