良性幽門狭窄症に対する胃空腸側々吻合術後48年目に発生した吻合部癌の1例を報告する.症例は72歳男性. 48年前(1945年)幽門狭窄症のため胃体上部大彎に胃空腸側々吻合術が施行された. 1993年12月胃空腸吻合部の潰瘍辺縁に生検で高分化型腺癌を認め,翌年3月22日,吻合部空腸を含め胃全摘術を施行した.病理組織検査では吻合部の2カ所に潰瘍を認め,その1つからは印環細胞癌,他からは中分化型腺癌をそれぞれ認め,癌部周囲の胃粘膜下にはGastritis Cystica Polyposa (GCP)様の所見を認めた.胃切除を伴わない胃空腸吻合術後に発生した胃癌の報告は,自験例を含め本邦では33例であり,胆汁の逆流と発癌との関係を強く示唆する症例である.