1998 年 59 巻 5 号 p. 1317-1322
症例は72歳の女性,右下腹部痛を主訴に当院内科を受診した.腹部エコーにて,回盲部腫瘤を認め,注腸造影検査により,虫垂は造影されず盲腸にポリープ様の欠損像を認めた.腹部CTで,盲腸の壁肥厚,先端は嚢胞性変化を認め,当科紹介となった.腹部所見は,右下腹部に圧痛を認め,鶏卵大の腫瘤を触知した.血液検査にて貧血を認め,腫瘍マーカーはCEAが高値を示していた.以上より,虫垂癌と診断し,右半結腸切除術を施行した.回盲部は一塊となり,虫垂周囲には膿瘍形成が認められた.病理組織検査の結果,虫垂原発の高分化型腺癌と診断した.
化学療法は施行せず,術後約2年経過するが,再発の徴候を認めず経過観察中である.
原発性虫垂腺癌は,頻度は0.08%と稀な疾患で,症状は急性虫垂炎と類似するため,術前診断に難渋することが多い.若干の文献的考察を加え,報告する.