日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
卵巣原発腹膜偽粘液腫に虫垂粘液嚢胞腺癌が併存した1例
金 達也島野 吉裕四宮 洋一中野 博重
著者情報
ジャーナル フリー

1998 年 59 巻 5 号 p. 1323-1327

詳細
抄録

卵巣粘液嚢胞腺癌原発の腹膜偽粘液腫に虫垂粘液嚢胞腺癌が併存した1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告した.
患者は65歳の女性で下腹部痛と下腹部膨満感を主訴に来院した.腹部超音波検査,腹部CT検査の結果,左卵巣嚢腫が原発の腹膜偽粘液腫と診断し,手術を施行した.超手拳大の左卵巣嚢腫が破裂し,内部よりゼリー状粘液が腹腔内にびまん性に広がっていた.左卵巣嚢腫摘出,虫垂切除を行い,腹腔内の粘液塊を可及的に除去した後,補助療法として低分子デキストラン溶液およびシスプラチンを腹腔内投与した.病理組織学的検査では左卵巣,虫垂ともに粘液嚢胞腺癌の像を呈していた.手術時の肉眼所見,組織所見より総合的に判断して両者は独立して発生した腫瘍であると考えられた.
患者は術後7年以上生存しておりデキストランとシスプラチンによる補助療法が有効であった.また卵巣原発の腹膜偽粘液腫においては虫垂の同時切除が必要であると思われた.

著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top