日本臨床外科学会雑誌
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血液透析患者に発症した壊死型虚血性腸炎の1例
神谷 紀之望月 康久菊池 光伸円谷 彰山本 俊郎杉山 貢
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キーワード: 虚血性腸炎, 血液透析
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1998 年 59 巻 5 号 p. 1332-1335

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抄録

症例は71歳,18年来の血液透析中の女性.腹膜炎の診断で開腹手術を行ったところ盲腸と上行結腸に限局性壊死を認めた.右半結腸切除術を行い,肉眼的に血流が良好だった小腸横行結腸端々吻合で再建した.しかし術後4日目の透析中に血圧低下を来し翌日腹痛が出現,縫合不全の診断で再開腹し横行結腸人工肛門造設術を行った.
切除腸管は病理組織学的に動脈閉塞は認めず,非閉塞性腸間膜虚血(NOMI)による壊死型虚血性腸炎と診断した.また縫合不全の原因は,透析中の血圧低下による腸間膜灌流圧低下と考えられた.
慢性血液透析患者に発症した虚血性腸炎は本邦では過去15年間に57例の報告があった.平均透析年数は8.2年で, 58.7%が右側結腸であった.主訴は腹痛のみが多く,下血を伴わないことが多かった.壊死腸管切除後は人工肛門を造設し2期的吻合を行うことが望ましく,周術期には透析による血圧低下に注意が必要である.

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