日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
腫瘍内に瘻孔を確認できた痔瘻癌の1例
柴田 佳久加藤 岳人松尾 康治尾上 重巳鈴木 正臣千木良 晴ひこ
著者情報
キーワード: 痔瘻癌, 瘻管
ジャーナル フリー

1998 年 59 巻 5 号 p. 1350-1353

詳細
抄録

症例は65歳男性. 20年来の痔瘻があり, 56歳時に痔瘻の手術を受けた.その後は硬結がみられたのみであった.術後9年を経て1996年肛門出血を主訴とし,他医で肛門部腫瘍を指摘され紹介された.肛門左側に痔瘻手術創を含む4cm大の硬結を伴う腫瘤を認めた.皮膚には腫瘍の露出はなかった. CT・MRIでは管外性発育を思わせる腫瘍として描出され,直腸肛門鏡所見では肛門管粘膜は一部びらん様で,生検にて表層粘膜に腺癌を認めた.肛門癌と診断し,肛門左側周囲組織を広範に切除する腹会陰式直腸切断術(D2)を行った.切除標本では,腫瘍は一部粘膜に露出しIa様で,その中心に痔瘻手術痕に一致し歯状腺付近に開口する瘻管がみられ管外へと延びていた.病理組織学的には,腫瘍の中心に瘻管を有し,開口付近の粘膜は高分化腺癌であり,瘻孔の深部は粘液癌であった.痔瘻手術後に発生した痔瘻癌と診断した.

著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top