1998 年 59 巻 5 号 p. 1354-1357
門脈臍部に発症した特発性血栓症に対し,肝円索より内視鏡を挿入することにより,低侵襲に血栓摘除術を行った1例を経験した.症例は73歳,女性.他院での腹部超音波検査にて門脈内臍部に腫瘤を認め,平成8年1月当科受診.各種画像診断より門脈血栓症と診断し,肝円索より門脈内視鏡を用いて血栓摘除を行った.術中の迅速病理診断では良性の病変であり,固定検体の病理診断でも同様であった.また,血栓摘除部分に狭窄や変形を認めることなく安全に手術を終了することができた.術後経過良好で,現在も門脈内に腫瘤像の再発や狭窄像も認めていない.本手技は低侵襲で門脈内の観察が可能であり,門脈血流遮断時間の短縮にもつながり,不必要な肝機能障害を回避でき有用な治療法の一つになると考えられた.