1998 年 59 巻 5 号 p. 1382-1384
症例は60歳女性,主訴は右下腹部痛.平成7年7月頃より時々腹痛を自覚したため,同年12月に近医を受診,注腸造影検査により,回盲部の変形を指摘された.平成8年5月に当院を受診,大腸内視鏡検査にて虫垂根部に隆起性病変を認めた.その性状は虫垂口を中心とする粘膜下腫瘤の形態を示し,虫垂口は開大し,発赤のある腫瘤の一部が露出していた.生検にては確定診断に至らず,継続する腹痛のため,虫垂根部腫瘤の診断の下に虫垂とともに盲腸部分切除術を施行した.切除した虫垂は灰白色,弾性やや硬であり,病理組織診断は異所性子宮内膜症であった.
腸管子宮内膜症は比較的稀な疾患であり,虫垂に発生したものは少ない.若干の文献的考察を加え報告する.