1998 年 59 巻 5 号 p. 1385-1388
外性子宮内膜症のうち皮膚に発生する頻度は,全子宮内膜症のうち約1.1%とされ,そのうち臍部に発生するものは約30%ときわめて稀である.今回われわれは,臍部に発生した子宮内膜症の1例を経験したので報告する.症例は46歳,女性.臍窩部に大豆大の腫瘤を自覚し,月経時に腫瘤中央部から出血を認めるようになり当科を受診した.腹部理学的所見では,臍部に大きさ2.5×2.3cm,中央部にDelleを有する茶褐色調の充実性の腫瘤を認めた.臍部子宮内膜症の診断のもと,開腹腫瘤摘出術を施行した.臍再建術は下腹部から遊離皮弁を採取し円錐形に形成した後,臍窩とし筋膜および皮膚に縫合した.病理組織診断では,臍部真皮組織に相当する部位に大小の嚢胞状を呈した子宮内膜組織に類似した腺腔構造と間質の増生を認めていた.本例では婦人科手術の既往のないことより,播種による発生は否定的であり,リンパ・血行性転移による発生が有力と考えられた.