日本臨床外科学会雑誌
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腹膜偽粘液腫の粘液排出にデキストラン製剤の奏効した1例
畝村 泰樹山崎 洋次竹村 隆夫
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1998 年 59 巻 5 号 p. 1414-1418

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抄録

粘液溶解療法は根治不能の腹膜偽粘液腫のQuality of lifeを向上させるといわれている.われわれは腹腔内投与の安全性が確認され,容易に入手できるdextran製剤を用い同療法を施行し効果を得た.症例は62歳男性,腹部膨満による症状が著明なため,低分子デキストラン®およびMDS®による粘液溶解を試みた.前者を腹腔内に500ml投与後4日目に1,740ml,後者を200ml投与後3, 5, 6日目に5,615mlの粘液の排出を認め,症状の軽減を認めた.患者は初診から16カ月後に腹腔内感染を併発し死亡したが,この間食事摂取は良好で,腹満や腸閉塞による症状はみられなかった.デキストラン製剤を使用した粘液溶解療法は患者のQuality of lifeを向上させ,試みるべき治療と考える.またその作用機序についても言及した.

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