日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
同時性胃壁内転移を起こした横行結腸癌の1例
延澤 進松本 日洋長堀 正和酒井 英樹田中 昇古川 穣治
著者情報
ジャーナル フリー

1998 年 59 巻 9 号 p. 2334-2338

詳細
抄録

症例は68歳女性で,貧血と心窩部不快感を主訴として来院した.注腸検査で横行結腸にapple core signを認め,大腸内視鏡で全周性3'型の癌と診断した.腹部CT,超音波検査で肝転移や腹膜播種の所見はなかった.術中に横行結腸癌とは別に胃角小彎の漿膜下に胃壁から連続した腫瘍を認め,胃周囲のリンパ節に転移を疑わせる腫大が見られたためD1郭清を伴う幽門側胃切除術も併施した.病理組織診の結果,大腸癌は深達度ssの高分化乳頭状腺癌で,胃壁固有筋層内に境界明瞭で大腸癌の組織型と一致した転移巣を形成し,胃周囲のリンパ節にも転移が見られた.大腸癌の胃転移は過去に10例の報告を認めるのみできわめて稀である.同時性転移に対して合併切除された症例は本例が第1例目である.本例は術前に高値を示したCEAが術後正常化したことより,合併切除により予後の改善が得られるかどうか今後注意深く経過観察していきたい.

著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top