日本臨床外科学会雑誌
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乳房温存手術から術式を変更した症例の検討
増田 慎三弥生 恵司古川 順康中野 芳明岡本 茂門田 卓士岡村 純
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1999 年 60 巻 1 号 p. 1-7

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抄録

大阪逓信病院外科において, 1990年1月から1997年5月までの間に乳房温存手術を試みた137症例について検討した.乳房温存手術の適応はT_??_3cm, N0またはN1a,乳頭腫瘍間距離_??_3cmで,術式は扇状部分切除(quadrantectomy)と腋窩リンパ節郭清を基本に,切離断端陰性を確認するために必ず術中迅速病理診断を施行した.断端陽性の場合は,乳房切除術あるいは乳腺全摘術へ術式変更した. 109例で乳房温存療法が施行され(温存群), 28例(20.4%)で術式変更を必要とした(術式変更群). 術式変更を要した主因は広範囲な乳管内進展病巣による断端陽性であった.
温存群と術式変更群の両群間で臨床病理学的特徴を比較検討すると,術式変更群で,若年者,閉経前患者, ER/PgR陽性, DNA indexがdiploidy, n(+)症例が多い傾向がみられた.また乳腺症や異型上皮増殖(ADH)などの随伴病変を認める症例が術式変更群に有意に多くみられた.
断端陽性の主因となる広範囲乳管内進展病巣を術前に特徴付ける明らかな臨床学的因子はなく,それゆえに乳房温存療法においてsurgical marginを陰性に保つためには,切離断端の術中迅速病理診断や切除標本の厳格な病理検査が重要かつ有用であると考える.

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