1999 年 60 巻 1 号 p. 198-200
症例は63歳,女性,交通事故による鈍的外傷のため呼吸困難を来たし当院入院となった.入院時両側多発肋骨骨折によるflail chestと左血胸を認め,気管内挿管による内固定術と左胸腔ドレナージを施行した.胸腔ドレーンからの出血量は著明でなく保存的に経過観察したが,胸部CT検査にて左外傷性横隔膜ヘルニアと脾損傷を認めたため,開腹術により横隔膜縫合術と脾摘を行った.ヘルニア内容は大網と脾臓で,脾臓が胸腔内に嵌頓し出血はごくわずかに認めるのみであった.また,腹腔内には全く出血は認められなかった.自験例は,脾損傷からの出血が血胸のみを呈した症例で,稀なメカニズムであると考えられた.