1999 年 60 巻 1 号 p. 193-197
膵体尾部癌の疑いにて膵尾側切除を施行し,術後の病理組織学的検査にて,膵の膵管癌と島細胞癌の併存癌と診断された症例を経験した.症例は62歳の男性,体重減少で来院した.入院時検査所見では,糖尿病を認めたが腫瘍マーカーは正常であった.腹部超音波検査と腹部CT, magnetic resonance imaging (MRI) にて膵体部に腫瘤を認め, en-doscopic retrograde pancreatography (ERP) にて主膵管は膵体部で途絶がみられたが,腹部血管造影では異常を認めなかった.膵癌の疑いにて膵体尾部切除術を施行した.腫瘍は膵体部にあり, 4.8×2.5×2.5cmで割面は灰白色充実性で周囲への浸潤性の乏しい腫瘍であり,リンパ節転移もなく,治癒切除可能であった.病理組織学的検査では膵管癌と島細胞癌の併存癌 (duct-islet cell carcinoma) と診断された.本症例は,報告例も少なく稀な症例と思われた.