日本臨床外科学会雑誌
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大量の下血を呈した転移性小腸絨毛癌の1例
橋本 慶博阿部 貞信萩原 栄一郎古川 良幸平井 勝也青木 照明
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1999 年 60 巻 2 号 p. 447-450

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抄録
症例は27歳女性.正常分娩後に下血を認め当院産婦人科受診.多量の下血によりショックとなり当科紹介となった.各種画像診断・内視鏡検査により空腸からの出血と診断,小腸切除術を施行した.術後病理検査により絨毛癌と診断され,化学療法目的にて婦人科転科となったが,その後脳転移・肺転移が認められた.妊娠中・産褥期に発症する絨毛癌の頻度は妊娠数万回に1回といわれている.絨毛癌はその生物学的特性より,早期から血行性転移を来す.特に消化管への転移は診断が困難であり,他に多発性転移を伴っていることが多く,予後不良のことが多い.
転移性小腸絨毛癌は非常に稀な疾患であり,本邦臨床例では8例の報告がみられるのみである.妊娠中・産褥期の絨毛癌は転移病巣による症状で発見されることもあり,異常性器出血,下血,呼吸器症状,脳神経症状に遭遇した場合には,頻度は少なくとも,絨毛癌の可能性も念頭におく必要がある.
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