抄録
症例は83歳女姓.臍周囲痛,右鼠径部腫瘤を主訴に来院.腹部単純X線にて,多数の小腸ガスおよび鏡面像を呈し,緊急腹部CT検査で,右鼠径部に嵌頓した腸管を認めたため,右大腿ヘルニア嵌頓による腸閉塞と診断し緊急手術を施行した.手術所見では,回盲部から約50cmの部位の回腸が大腿動静脈の内側にRichter's herniaの状態で嵌頓していた.さらに小腸はtreitz靭帯と嵌順部を軸に反時計方向に360° 捻転し小腸全体は暗赤色を呈していた.嵌頓,軸捻転を解除したが嵌頓した一部回腸は血流障害による壊死性変化が強く,回腸部分切除を施行した.他の小腸は解除と同時に正常色に復した.術後経過は良好で第16病日に退院となった.二次性の小腸軸捻転症で,ヘルニアによって引き起こされるものは極めて稀であり,若干の文献的考察を加え報告した.