抄録
症例は46歳女性.左鼠径部腫瘤を主訴に受診した.左鼠経腫瘤はリンパ節であり穿刺吸引細胞診はadenocarcinoma, Group Vであった.また肛門指診では,下部直腸に3cm大の弾性硬の腫瘤を触知し,肛門周囲には5×5cm大に広がる境界明瞭な紅斑様病変を認めた.肛門周囲皮膚病変の生検でPaget細胞を認めた.大腸内視鏡検査では直腸Rbに2型腫瘍を認め,生検で印環細胞癌を認めた.以上より肛門周囲Paget病を伴った直腸印環細胞癌,鼠径リンパ節転移と診断し,仙骨腹式直腸切断術,膣後壁合併切除,左鼠径リンパ節郭清を施行した.肛門周囲Paget病を伴った直腸印環細胞癌は稀な疾患であり, 文献的考察を加え報告した.