抄録
残胃の癌切除例におけるリンパ節転移傾向から,そのリンパ節郭清法について検討した.
対象は1968年から1993年までに当教室で切除した幽門側胃切除後の残胃の癌174例とし,同時期に切除した上部原発胃癌1,211例を対照とした.
残胃の癌では上部胃癌に比べ他臓器浸潤例が多く,深達度se以深の症例ではn 3・n4へのリンパ節転移が多かった.特にNo.14 aリンパ節は転移頻度が高く, se以深の残胃の癌では重要なリンパ節と考えられた.しかし,残胃の癌におけるリンパ節郭清の程度は低く,総合的進行程度別の5年生存率はstage IIIbおよびstage IVaで著しく低かった.
これらの結果より,残胃の癌治療成績向上のためには, se以深の症例においてNo. 14aリンパ節を含めた広範なリンパ節郭清が必要であると思われた.