日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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ISSN-L : 1345-2843
60 巻, 3 号
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  • 1999 年 60 巻 3 号 p. 579-598
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
  • 甲状腺,上皮小体腫瘍20例の経験
    清水 一雄, 北村 裕, 北川 亘, 赤須 東樹, 田中 茂夫
    1999 年 60 巻 3 号 p. 599-604
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    美容上の観点から頸部創を最小限にとどめる目的で,甲状腺腫19例,上皮小体腫瘍1例の20例,計22個の腫瘍に対し,われわれの考案した前頸部吊り上げ法を用い内視鏡下摘出術 (Video-Assisted Neck Surgery: VANSと命名)を行った.甲状腺へのアプローチは開襟衣類で覆われる鎖骨下前胸壁を主切開創として行った.術前細胞診で3bのうち2例には気管前,気管傍リンパ節の予防的隔清を追加した.摘出腫瘍直径は17~53mm (平均34.7mm), 重量は2.5~32.6g (平均14.3g), 出血量は5~360ml (平均111.3mL), 手術時間1時間2分~3時間54分(平均2時間14分),術後在院日数3~8日(平均5.1日)であった.本法は手術時間,出血量にまだ問題を残すが,経験を重ねるごとに改善されると思われ,また前胸壁創は開襟衣類で隠せるため,美容上極めて有用性があると考えられた.
  • 松山 南律, 麻田 邦夫, 近藤 敬一郎, 小玉 敏宏, 長谷川 滋人, 澤田 吉英, 中尾 雅朋, 吉井 康欣, 湯田 淳, 佐々木 進次 ...
    1999 年 60 巻 3 号 p. 605-608
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1990年5月から1997年9月までに当科で手術を施行した経皮経静脈的僧帽弁交連裂開術(Percutaneous Transvenous Mitral Commissurotomy;以下PTMC)後の僧帽弁置換術(Mitral Valve Replacement;以下MVR)9例を対象とし,手術までの期間,手術所見などからPTMCの適応を再検討した.症例は男性2例,女性7例で,手術時年齢は47歳から61歳,平均622歳で2例が70歳以上であった. 2例にPTMC以前の僧帽弁交連切開術の既往があり,全例に心房細動を合併していた.手術理由は僧帽弁再狭窄が6例,新たに生じた僧帽弁閉鎖不全が1例, PTMC施行時の左室破裂に対する緊急手術が1例,僧帽弁再狭窄と他弁疾患の連合弁膜症が1例であった.手術術式は単独MVRが4例, MVR+三尖弁輪形成術(Tricuspid Annuloplasty;以下TAP)が2例, MVR+TAP+冠状動脈バイパス術が1例, MVR+左室破裂修復が1例, MVR+大動脈弁置換術が1例であった.手術死亡は2例で, 1例は71歳の緊急手術後の低心拍症候群(LowOutput Syndrome;以下LOS),他の1例は71歳のMVR例でLOSと脳梗塞が死因であった.手術所見は8例に僧帽弁(特に交連部)および弁下部の硬化,石灰化を認めた. 1例はPTMCによる交連の癒合は解除されていたがバルーンによる腱索の断裂がみられた.僧帽弁交連部および弁下部病変の強い症例の効果は短期間であり,また稀ながら致死的な合併症を伴うことから, PTMCの適応は慎重に考慮する必要がある
  • 大野 耕一, 木下 博明, 塩川 智司, 辻本 嘉助, 中平 公士, 竹内 敏
    1999 年 60 巻 3 号 p. 609-613
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    漏斗胸の判定法であるVertebral Index (VI) とFrontosagittal Index (FSI) を用いて胸骨挙上術を行った漏斗胸患児36例と正常児210例を検討した.正常児のVIは年齢とともに漸増し, FSIは漸減した.患児のVIは術前の32.5±7.8から術後は24.6±4.0に低下した.しかし3歳以上の正常対照20.0±2.4より有意に高かった.患児のFSIは術前の22.5±7.2から術後は34.9±6.7に上昇した.しかし3歳以上の正常対照41.6±4.3より有意に低かった.またVIとFSIの間には術前,術後とも相関がみられたが,術前後のVIあるいは術前後のFSIに相関は認められなかった.以上よりVI<22, FSI>37を正常, VI22~25, FSI30~37を要観察, V>25, FSI<30を手術適応と考えたが,同時に両判定法を計測する必要性は乏しい.また術後のVIとFSIは必ずしも陥凹を表しておらず,術前のVIとFSIから術後の胸郭の形態を予測することはできなかった.
  • 金田 邦彦, 石川 羊男, 平井 昭博, 西原 徳光, 中江 史朗, 河村 貴, 寒原 芳浩, 河野 範男, 中谷 正史
    1999 年 60 巻 3 号 p. 614-619
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    当科で切除した組織学的深達度がsmまでの食道表在癌31例のうち非開胸食道抜去術を行った21例を対象とし,右開胸開腹による食道切除術(以下標準術式)を行った表在癌症例10例と手術時間,出血量,合併症,予後等について比較検討した.手術時間は抜去術4.9±1.1時間,標準術式7.5±1.9時間,出血量は抜去術620±240ml,標準術式1.190±1,100mlであった.術後合併症として縫合不全6例,反回神経麻痺2例,開胸2例が認められた.再発転移例は21例中6例(いずれも深達度sm) で再発形式は遠隔転移4例(肝2例,肺1例,皮膚1例),リンパ節転移2例(縦隔1例,頸部1例)であった.死亡例はsmで3例を(原病死2例,他病死1例)認めたが,深達度mの症例は10例全例無再発生存中である.
    非開胸食道抜去術は深達度mの食道表在癌に対する治療方式として開胸開腹の標準術式に比較して根治性を損なわずかつ低侵襲の手術術式であり, EMRの適応となりにくい表層拡大型の病変や多発病変に対しても有用な治療方法であると考えられた.
  • 平井 敏弘, 向田 秀則, 山下 芳典, 吉田 和弘, 井上 秀樹, 檜原 淳, 桑原 正樹, 峠 哲哉
    1999 年 60 巻 3 号 p. 620-625
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    食道癌患者に対して,告知を試み,告知によるQOLの変化について調査した.告知除外例は, 1. 患者が告知を希望しない場合, 2. 患者に病状の理解力がない場合, 3. 家族の同意が得られない場合, 4. SDSスコアーが60以上の高度うつ状態の場合とした.入院時の患者への告知に関するアンケート調査の結果では,患者自身への告知を希望した人が68.3%, 家族への告知を希望した人が19.5%, 患者自身へ全情報を告知することを希望した人は46.3%であった.実際の告知状況は,告知例が59.7%であり,非告知例の82.8%は家族の同意が得られないためであった.告知率は,女性,高齢者,非切除例,進行例が低い傾向であった.日常の生活はできたか,食欲はあったか,集中力があったかの質問項目で,告知群では有意なQOLスコアーの低下を認めた.しかし, face scaleに関してはむしろ告知群で有意な改善を認める結果であった.
  • 荘加 潤, 鈴木 博孝, 喜多村 陽一, 小熊 英俊, 梁取 絵美子, 高崎 健
    1999 年 60 巻 3 号 p. 626-630
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    残胃の癌切除例におけるリンパ節転移傾向から,そのリンパ節郭清法について検討した.
    対象は1968年から1993年までに当教室で切除した幽門側胃切除後の残胃の癌174例とし,同時期に切除した上部原発胃癌1,211例を対照とした.
    残胃の癌では上部胃癌に比べ他臓器浸潤例が多く,深達度se以深の症例ではn 3・n4へのリンパ節転移が多かった.特にNo.14 aリンパ節は転移頻度が高く, se以深の残胃の癌では重要なリンパ節と考えられた.しかし,残胃の癌におけるリンパ節郭清の程度は低く,総合的進行程度別の5年生存率はstage IIIbおよびstage IVaで著しく低かった.
    これらの結果より,残胃の癌治療成績向上のためには, se以深の症例においてNo. 14aリンパ節を含めた広範なリンパ節郭清が必要であると思われた.
  • 鈴木 康司, 薮田 宗彦, 菊池 誠, 渡邉 正志, 窪田 覚, 戸倉 夏木, 瀧田 渉, 辻田 和紀, 小林 一雄, 吉雄 敏文
    1999 年 60 巻 3 号 p. 631-637
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大腸癌イレウスでは,根治術に先立って腸管の減圧と全身状態の改善が重要な問題となる.イレウス管では減圧が多くの場合不十分である.本論文では根治術に先立ち,盲腸に膀胱留置用のマレコットカテーテルを挿入する腸管減圧術を試みた14例について検討した.盲腸瘻の造設は平均46分で, 1例の局所麻酔を除く13例(93.3%)が腰椎麻酔下に行った。減圧術に直接関係する合併症はなく,挿入翌日から平均320mlの生理食塩水の潅流を開始した. 8例 (53.3%) にカテーテル周囲皮膚炎が発生したが,保存的に治癒した.根治術は挿入から平均17日後に行い,腸管内の洗浄程度は極めて良好であり,根治度C症例1例を除く全例にD2以上の郭清を施行し得た.累積5年生存率は48.9%であった.また,最長8年半観察したが,盲腸瘻造設部に癌再発は認めていない.以上より大腸癌イレウスとくに左側大腸閉塞に対し,本方法は有用であると思われた.
  • 丸山 道生, 江渕 正和, 菅野 範英, 長浜 雄志, 吉田 達也, 入江 工, 遠藤 光夫
    1999 年 60 巻 3 号 p. 638-641
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    9例の食道癌肝転移に対しての肝動注化学療法を施行し,検討を加えた.異時性肝転移5例,同時性肝転移4例であった.食道原発巣は下部食道に多く (Im 2, Ei 3, Ea 4例),組織型は分化の低い扁平上皮癌もしくは特殊型であった.同時性肝転移例では75%で深達度mpであった.肝動注化学療法はCDDP 20mg (4h)/5 FU 750mg (5h) 4日間連日を1クールとし, 1~2クール施行後,それに連続して毎週もしくは隔週の5FU 1,000mg (5h) を動注した.異時性肝転移に対してのSeldinger法による肝動注カテ挿入留置および治療では胃管の虚血・壊死などの重傷な合併症はなかったが, 2例に胃管の潰瘍形成がみられた.同時性肝転移の肝動注カテ挿入には,胃管の栄養血管である胃十二指腸動脈を温存する必要から,症例毎の工夫が必要であった.化学療法の有効例 (CR+PR) は38%であった.癌再燃による死亡は他部位の転移によるものであった.
  • 富田 凉一, 藤崎 滋, 丹正 勝久, 福澤 正洋
    1999 年 60 巻 3 号 p. 642-646
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    最近10年間に教室で経験した75歳以上高齢者急性胆嚢炎症例26例 (75~92歳,平均80.8歳,男性6例,女性20例)を,傍乳頭憩室の有無で2つに分け臨床的特徴を分析し以下の結果を得た.傍乳頭憩室を併存する例では非併存例に比較して, 1) 急性胆嚢炎の合併率が高かった. 2) Charcot 3徴を多く認めた. 3) 白血球数増加,肝機能障害を多く認めた. 4) 総胆管結石を多く認めた. 5) ビリルビンカルシウム石を多く認めた. 6) 胆嚢内細菌感染 (E.coliなど)を全例に認めた. 7) 全身合併症(無気肺,心不全など)の発生率が腹部合併症(創感染,腸閉塞症など)より高かった.なお,術後合併症発生症例では,傍乳頭憩室の有無に関係なく心・肺・肝・腎機能のうち1因子以上が異常を示した.
  • 松崎 弘志, 岡住 慎一, 高山 亘, 竹田 明彦, 福長 徹, 岩崎 好太郎, 首藤 潔彦, 青山 博道, 篠藤 浩一, 所 義治, 浅野 ...
    1999 年 60 巻 3 号 p. 647-650
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    粘液産生膵腫瘍の嚢胞径・乳頭状隆起の有無による良悪性の鑑別について検討した.標本における嚢胞径は良性群で20.2±7.7mm (mean±SD), 悪性群で28.7±8.8mmと,悪性例で有意に大きかった.乳頭状隆起を有する割合は悪性群で高く,隆起径も大きい傾向にあったが,有意差は認めなかった.嚢胞径が20mm以下で乳頭状隆起を認めなかった8例のうち,良性が7例87.5%を占め,嚢胞径20mmを超えるかまたは乳頭状隆起を認めた21例のうち, 16例76.2%が悪性であった.画像診断においては,嚢胞の描出は比較的優れていたが,乳頭状隆起の描出については不良であった.画像上嚢胞径20mm以下で乳頭状隆起が描出されない症例を良性と判定したときの正診率は71.4%であり,乳頭状隆起の描出能の向上と,他の方法を組み合わせたさらに多角的な診断法が今後必要と考えられた.
  • 田中 浩司, 岩井 武尚, 井上 芳徳, 村岡 幸彦, 根本 哲生
    1999 年 60 巻 3 号 p. 651-655
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は50歳,女性.突然の激しい頭痛と右頸部腫瘤を主訴に近医を受診し, MRI等の検査にて神経鞘腫疑いと診断され手術を施行された.術中所見で右内頸動脈瘤と判明したため手術を中止し,当科転院となった.病変は3D-CT上3.5×2cmの嚢状動脈瘤で内部に血栓を認めた.脳MRIで右前頭葉に陳旧性梗塞像を認めたが,神経学的異常所見はなかった.以上より右内頸動脈瘤の診断のもと瘤切除,自家静脈間置術を施行した.術中内頸動脈断端圧は高値であったが,梗塞巣があること, 2カ所の血管吻合に時間がかかることから内シャントを用いた.術中脳波に異常を認めず,再建後の血流量も良好であった.術後は順調に経過し,血管撮影上自家静脈は良好に開存していた.病理組織学的には真性動脈瘤で,中膜の弾性繊維の断裂と全層に及ぶ炎症性細胞浸潤を認め,非特異的な血管炎と診断した.内頸動脈瘤は比較的まれな疾患であり,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 佐川 庸, 窪園 隆, 明比 俊, 中村 太郎, 坂東 康生
    1999 年 60 巻 3 号 p. 656-660
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は82歳,女性.右乳房D領域に1.5cm大の可動性のある硬い腫瘤を触知し,当科受診した.超音波像では境界比較的明瞭で,内部低エコー,縦横比0.7であった.穿刺吸引細胞診では乳管上皮の集塊がみられ,クロマチンも増量しているためductal carcinomaも疑われたが,比較的小型核でありClass IIIであった.局所麻酔下にwide excisionを施行. HE染色像では構成成分が導管上皮とそれを取り囲む筋上皮成分よりなる境界明瞭な腫瘍で, adenomyoepithelioma (腺筋上皮腫)と診断された.免疫組織化学染色ではepithelial membrane antigenとcytokeratinが腺上皮において陽性であり,一方筋上皮に対してはS-100 proteinとα-smooth muscle actinとが陽性であった.乳房の腺筋上皮腫は稀な疾患であり,自験例では細胞分裂像や異形細胞が認められないことより良性と診断したが,局所再発や遠隔転移例の報告も散見されることから,今後経過観察を要すると思われた.
  • 木原 実, 松坂 憲一, 宮内 昭, 前田 昌純
    1999 年 60 巻 3 号 p. 661-664
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    極めて稀な疾患である乳腺間質肉腫の1例を経験したので報告する.症例は48歳女性で, 2年前に右乳房腫瘤を自覚した.半年前より急速増大し,皮膚が裂け出血したため受診した.初診時の腫瘍径は10×8.7cmであった.穿刺吸引細胞診で乳腺間質肉腫と診断し, Auchincloss手術を施行した.術後10カ月現在,再発なく健在である.本疾患には化学療法,放射線療法は無効とされており,初回手術での根治性のある外科切除が重要である.
  • 織畑 道宏, 三橋 宏章, 根上 直樹, 畑 真, 森脇 稔, 掛川 暉夫, 楯 玄秀, 光谷 俊幸
    1999 年 60 巻 3 号 p. 665-668
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    われわれは,脂肪肉腫様の分化を示した乳腺悪性葉状腫瘍の1例を経験した.症例は, 53歳女性. 1996年8月無痛性の右乳房腫瘤に気づき当院受診,右CD領域に径1.5cmの境界明瞭な硬い腫瘤を認めた.超音波検査では,腫瘍は辺縁平滑で縦横比が低く,内部が低エコーと高エコーのモザイクをなし外側陰影を伴っていた.マンモグラフィでは腫瘍は境界明瞭で透明帯を認めた,摘出標本より,脂肪肉腫様の分化を示した乳腺悪性葉状腫瘍と診断,非定型的乳房切除術 (Bt+Ax) を施行した.腋窩リンパ節転移は認めなかった.放射線療法や化学療法を行ってはいないが,術後1年10ヵ月たった現在も再発を認めていない.
  • 三竿 貴彦, 中村 光次, 中川 準平
    1999 年 60 巻 3 号 p. 669-672
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    乳腺粘液癌は比較的稀な組織型で,その予後は良好とされている. 1991年より1997年までに当科で経験した粘液癌は13例(3.9%)であった.純型は8例,混合型は5例で,平均年齢はそれぞれ56.3歳, 54.8歳であった.画像診断にて癌と診断されたものは,乳腺撮影では粘液癌13例中4例,超音波検査では5例と少なく,純型,混合型の鑑別は困難であった.穿刺吸引細胞診では,純型の8例中6例が,混合型の5例全てが癌と診断され,有用な診断手段と考えられた.腋窩リンパ節転移は,混合型では2例に認められたが,純型では全例陰性であり,再発はなかった.
    以上より,純型粘液癌は縮小手術の対象となる可能性があると考えられるが,術前の純型,混合型の鑑別が今後の問題である.
  • 藤島 宣彦, 大宅 宗治, 三浦 源太, 山口 方規
    1999 年 60 巻 3 号 p. 673-675
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,男性で,背部腫瘤を主訴に来院した.腫瘤は左背部で肩甲骨下部にあり,弾性硬で可動性は良好であるが境界は不明瞭であった. CTではisodensityを示す扁平な腫瘍であり,穿刺吸引細胞診にてclass I, 針生検では,結合組織と少量の弾性線維が採取された,良性軟部腫瘍の診断で切除術を施行した.腫瘍は皮膚との癒着なく,上肢の上下運動によって肩甲骨の下に潜ったり表れたりした.境界不明瞭であり,周囲筋肉,肋骨骨膜と癒着していた.摘出標本は7.5×3.3×4.4cm大で,被膜を有しない腫瘍で割面は黄白色を示した.術後病理診断は,弾性線維腫であった.弾性線維腫は繰り返す摩擦による結合組織の反応性増生と考えられており,沖縄,フィンランドに好発する特異な比較的稀な腫瘍である.この腫瘍は境界不明瞭であるために,しばしば悪性腫瘍と誤診される可能性があるがその特徴を知れば診断は比較的容易であるため,文献的考察を加えて報告した.
  • 杉浦 禎一, 神谷 里明, 横井 俊平, 新実 紀二
    1999 年 60 巻 3 号 p. 676-679
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,男性.多発性の肝細胞癌に対し肝動脈塞栓術を6回施行している.7回目の塞栓術は,腫瘍の栄養動脈である右下横隔膜動脈,右第9・10肋間動脈にスマンクス4mgをリピオドール10mlで溶解したものをそれぞれ5ml, 3ml, 1ml注入した.患者は注入直後より両下肢のしびれ,疾痛を訴え,翌日には脊髄横断症状を呈し,以後改善をみなかった. MRIではTh9・10レベルで梗塞の像を示した.術前に行った血管造影を見直すと第9肋間動脈より分枝する脊髄動脈を認めた.以上より肋間動脈を介して脊髄動脈にリピオドールが流入し脊髄梗塞が発症したと考えた.
  • 福永 亮朗, 大柏 秀樹, 武岡 哲良, 近藤 哲, 加藤 紘之
    1999 年 60 巻 3 号 p. 680-683
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    73歳,男性の原発性肝癌(S3)症例に対しTAE, 肝外側区切除術を施行したが2年後に胸骨転移をきたした.しかし他部位に転移を認めなかったので胸骨腫瘍切除, Mar-lex mesh®による胸壁再建術を施行した結果,良好な結果が得られたので報告した.原発性肝癌の骨転移は発見された時点で既に進行期にあることが多く,胸骨にのみ転移をきたし,治癒切除しえた報告は極めて稀である.本症例は転移巣が完全に切除され, 1年後の現在,他の部位に転移巣を認めていない.
  • 坂本 和裕, 鹿原 健, 鈴木 弘治, 城島 標雄
    1999 年 60 巻 3 号 p. 684-688
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,女性.腰背部痛にて来院時,胸部X線検査にて右上肺野に腫瘤影を指摘された.胸部CT検査にて右肺上葉S3aの末梢に径8mm大の境界明瞭な腫瘤を認め,強く造影された.気管支鏡検査を行ったが腫瘤より出血し確定診断は得られなかった.術前に透視下でpoint marker針を腫瘤近傍に留置し胸腔鏡下に自動縫合器を用いて腫瘤を含めた肺部分切除を行った.病理組織学的には肺硬化性血管腫と診断され,腫瘍内には血管腔の形成が目立った.免疫組織学的検査では, epithelial membrane antigen (EMA), vimentin陽性, surfactant apoprotein, cytokeratin, α-smooth muscle actin (SMA),は陰性であった. progesterone receptor (PGR)は陽性, estrogen receptor (ER) は陰性であった.
    胸腔鏡下肺腫瘤生検を行う際,胸膜面から離れた小型腫瘤の場合,腫瘤の存在部位の同定は困難である.今回われわれは,術前にpoint marker針を留置する事により腫瘤の切除を容易に行うことができた.
  • 山口 祐二, 田平 洋一, 森 毅, 中野 敢友, 北村 信夫, 本郷 弘昭
    1999 年 60 巻 3 号 p. 689-692
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大網をヘルニア内容とするMorgagni孔ヘルニアで,食道裂孔ヘルニアを合併した症例を経験した.症例は80歳女性で胸写にて右下肺野に突出する境界明瞭な腫瘤を認め, CTで脂肪成分が疑われ, MRIでは腹腔との連続が疑われた.手術は胸骨縦切開アプローチで行いマーレックスメッシュによりヘルニア孔を閉鎖した. Morgagni孔ヘルニアの診断にCT, MRIは重要であり,胸骨縦切開アプローチによる手術は有用な治療法と考えられた.
  • 黒田 直樹, 高木 融, 佐藤 滋, 酒井 治正, 青木 達哉, 小柳 泰久
    1999 年 60 巻 3 号 p. 693-696
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胸腔鏡下縦隔腫瘍摘出術後の食道縦隔瘻にethyl 2-cyanoacrylate注入が有効であった1例を報告する.
    症例は40歳男性.健診にて胸部異常陰影を指摘され,精査治療目的に入院,縦隔腫瘍の診断にて胸腔鏡下腫瘍摘出術が施行された.腫瘍は気管原性嚢胞と診断された.術中食道壁を損傷し開胸下に縫合修復を行ったが,術後食道縦隔瘻となった.禁食,中心静脈栄養管理,ドレナージ,抗生剤投与による保存的治療を行ったが瘻孔は難治性となった.内視鏡的にethyl 2-cyanoacrylateを瘻孔内に注入したところ1回の注入により瘻孔の閉鎖を認め,注入後40日にて退院となった.
    難治性瘻孔に対する内視鏡的瘻孔閉鎖術は比較的簡単な手技で安全に繰り返し施行でき,治療期間を短縮できる点で有効と思われる.
  • 大沼 忍, 吉田 操, 葉梨 智子
    1999 年 60 巻 3 号 p. 697-702
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は66歳の男性で,嚥下困難を主訴として入院した.透視,内視鏡上は中部食道を中心に長径15cmの潰瘍性病変を有する食道癌で,生検組織診断で中分化型扁平上皮癌と診断された.腹部CT上,大動脈周囲のリンパ節腫脹が認められ転移と診断された. CDDP, 5-FU, Leucovorinを用いた術前化学療法を2クール施行したところ,大動脈周囲のリンパ節腫脹は消失し手術を施行しえた.病理組織学的には食道未分化癌非小細胞型 (non-small cell type) と診断された.現在,術後5年1ヵ月を経過しているが再発なく生存中である.食道未分化癌は頻度は少ないが悪性度が高く予後不良な疾患である.最近の報告で2年以上生存した症例はほとんどが手術,化学療法,放射線などを組み合わせた集学的治療を行っている.
  • 竹村 雅至, 大杉 治司, 徳原 太豪, 高田 信康, 木下 博明, 東野 正幸
    1999 年 60 巻 3 号 p. 703-707
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌術後胸部食道癌の2例に対し胸腔鏡下食道切除術を行った.症例1は80歳・男性.嚥下困難を主訴に来院し,食道造影で食道癌を指摘された. 16年前に喉頭癌で喉頭摘出を受けた.胸腔鏡下食道切除および頸部食道外瘻を行い,ついで胸壁前胃管再建を行った.病理学的検査では,低分化型扁平上皮癌, a2, n2, ly3, v0, stageIIIであった.現在,術25カ月後で再発なく生存中である.症例2は, 77歳・男性.主訴は特になく,右側胸部痛の精査中に内視鏡検査で食道癌を指摘された.既往歴として, 5年6カ月前に下咽頭癌で喉頭摘出を受けた.術前検査で他臓器浸潤なく広範囲なリンパ節転移も認めず,胸腔鏡下食道切除再建を行った.病理学的検査では,中分化扁平上皮癌, m3, n0, ly0, v0, stage 0であった.術後は合併症なく経過し,術7カ月後で再発なく生存中である.胸腔鏡下食道切除術は高年齢の手術侵襲の軽減のため頭頸部癌術後胸部食道癌症例に有用である.
  • 遠藤 俊治, 宗田 滋夫, 根津 理一郎, 吉川 幸伸, 森 匡, 大嶋 正人
    1999 年 60 巻 3 号 p. 708-714
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は78歳男性.左季肋部痛を主訴に当院に入院した.左季肋部に圧痛を伴う巨大な硬い腫瘤を触知した.胃十二指腸造影で胃底部から体上部大彎前壁よりに粘膜下隆起性病変を認めた. CT, MRIおよび超音波検査では同部に充実性の16×16×13cm大の腫瘤を認め,胃,膵,脾,左腎は圧排されていた.超音波内視鏡検査では胃壁第4層から外側に突出する腫瘍を認めた.以上より胃平滑筋肉腫の診断にて外科的手術を施行した..胃底部前壁大彎側よりに巨大な表面凸凹の腫瘍を認めたが,転移は認めなかった.腫瘍は19×15×10cm大, 1,600g,充実性で内部に壊死を伴っていた.組織検査にて紡錘型腫瘍細胞の密な増殖を認め,核の異型性と分裂像を散見した. S-100蛋白染色, NSE染色で陽性, SMA染色で陰性を呈し,神経原性と考えられた.以上の所見より胃悪性神経鞘腫と診断された.術後10ヵ月を経た現在まで再発兆候はなく,経過は良好である.胃悪性神経鞘腫は比較的稀な疾患で,本邦では25例が報告されているにすぎない.転移は特に腫瘍径の大きなものにみられ,自験例についても慎重なfollowが必要である.
  • 宮川 英喜, 武藤 功
    1999 年 60 巻 3 号 p. 715-720
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は68歳の男性で突然の腹痛を訴え受診した.腹部エコー, CTにて腹部腫瘤と腹腔出血を認め入院した.精査の予定であったが,腹痛,出血,貧血が増強するため翌日緊急手術を施行した.腹腔に約1,000ccの血液貯留を認め,胃前庭部,十二指腸,膵頭部,横行結腸を巻き込む小児頭大の腫瘤と腫瘤壁の破裂を認めた.膵頭十二指腸切除術兼横行結腸合併切除術を施行した.腫瘤は12×12×10cmで充実性,多房嚢胞性で多彩であった.また,胃前庭部大彎に4×3cmの2型腫瘍を認めた.組織所見は腫瘤,胃病巣ともに高分化型腺癌で膵,十二指腸,横行結腸に浸潤していた.腫瘤は胃癌の壁外発育とも考えられたが,腫瘤内にリンパ節構造の遺残を認め,またその他の転移リンパ節にも腫瘤と同様の多彩な所見を認めたことから腫瘤は胃癌の転移リンパ節(6)が異常に発育したものと考えられた.胃癌の主病巣よりはるかに大きな転移リンパ節が破壊した症例で非常に稀と思われる.
  • 橋本 謙, 白水 玄山, 平木 幹久, 林 伸昭, 井上 光昭, 久下 亨
    1999 年 60 巻 3 号 p. 721-724
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,男性,全身倦怠感を主訴として来院した.血液検査では大球性高色素性貧血, LDHアイソザイムI, IIの増加,血清ガストリン値の上昇,ビタミンB12の減少を認めた.また,抗胃壁抗体,抗内因子抗体陽性により悪性貧血と診断した.胃透視,胃内視鏡検査では胃体中部から胃角部後壁に不整形な小隆起の集籏を認めIIa集族型早期胃癌と診断した.手術は幽門側胃切除およびD1+No(7)リンパ節郭清を施行した.悪性貧血に合併した胃癌の頻度は欧米に比し本邦では比較的少ないとされている.今回,われわれは悪性貧血に合併した早期胃癌症例を経験したので,本邦報告例61例を集計し検討した.悪性貧血合併胃癌の特徴は隆起型で高分化型腺癌が多く,好発部位の特徴は無く多発傾向を示した.
  • 畠山 悟, 梨本 篤, 土屋 嘉昭, 筒井 光広, 田中 乙雄, 佐々木 壽英
    1999 年 60 巻 3 号 p. 725-729
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Krukenberg腫瘍,腹膜播種,癌性胸膜炎,癌性心膜炎,リンパ節転移など広範な転移を伴った稀な胃粘膜内癌を経験したので報告する.症例は46歳の女性で,下腹部腫瘤を主訴に近医受診し,子宮筋腫ならびに両側卵巣腫瘍の診断で当院婦人科に紹介となった.開腹時,両側の卵巣が手拳大に腫大し,迅速病理診は印環細胞癌であり,転移性卵巣腫瘍の診断となった.また,腹水の細胞診はclass Vであった.内性器摘出後,原発巣を検索したが,胃所属リンパ節に転移を認めたほかは,他臓器に転移を来すと思われる進行癌は認められなかった.後日,胃内視鏡検査にて胃体部にIIc型低分化型腺癌が確認された.局所切除術を施行し,病理組織学的には深達度mの印環細胞癌であり, ly0, v0であった. Galactose oxidase-cold thionin Schiffとparadoxical Concanavalin A stainingとの二重粘液染色の結果, Krukenberg腫瘍は胃癌の転移であり,胃病変が原発巣であると診断された.
  • 井上 好央, 池上 雅博, 中村 純太, 小野 敏孝, 平井 勝也, 青木 照明
    1999 年 60 巻 3 号 p. 730-735
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は48歳の男性.貧血,黒色便および食後上腹部膨満感を主訴に他院にて精査中,食事摂取不能となり,当院へ紹介入院となった.入院時,貧血を認め,上腹部に18cm大の腫瘤を触知した.画像診断より十二指腸原発平滑筋肉腫および肝転移と診断し,手術を施行した.術中所見として,腫瘍は十二指腸水平脚より起始し,主に管内発育型を示す混合型で,膵鉤状部に浸潤していた.十二指腸空腸部分切除,膵鉤状部合併切除にて原発巣を切除し,肝S6, 7亜区域切除を施行した.病理診断にて原発性十二指腸平滑筋肉腫,肝転移と診断された.退院後,外来通院中,多発肝転移と局所再発をきたし,術後1年8か月後に肝不全のため死亡した.原因不明の消化管出血に対する十二指腸検査の重要性を認識させられた1例であった.
  • 山中 秀高, 松田 信介, 鈴木 英明
    1999 年 60 巻 3 号 p. 736-741
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    虚血性小腸炎は稀な疾患で,術前診断が非常に困難である.今回,術前に小腸狭窄部を診断し得た狭窄型虚血性小腸炎の2例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.症例1は48歳女性.上腹部痛と下血で入院.絶食・輸液で軽快し退院.初回入院42日後にイレウスとなった.小腸造影で空腸に狭窄を認め手術施行.トライツ靭帯の肛門側40cmの空腸狭窄にて,空腸部分切除術を施行.摘出標本で支配動脈の血栓性閉塞とU1-IIの潰瘍,担鉄細胞を含む肉芽組織を認め虚血性小腸炎と診断した.
    症例2は76歳男性.脳血栓症にて入院中,左下腹部痛と発熱を来し絶食,輸液にて軽快したが,発症18日後にイレウスとなる.小腸造影と腹部血管造影で回腸の狭窄型虚血性小腸炎と診断し手術施行,回盲弁の口側40cmの回腸壊死性狭窄および穿孔を認め,回腸部分切除術を施行.摘出標本にて全層壊死とU1-IVの潰瘍,担鉄細胞が確認された.
  • 菅原 元, 藤岡 進, 加藤 健司, 待木 雄一, 橋本 瑞生, 石川 玲
    1999 年 60 巻 3 号 p. 742-745
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    イレウスの稀な原因として鈍的腹部外傷後の遅発性小腸狭窄がある.今回,受傷後25日目に発症した小腸狭窄の1手術例を経験したので,報告する.症例は38歳男性.作業中に右下腹部を鉄材で強打した.数日で腹痛も治まり様子をみていたが,受傷後25日目に腹痛と嘔吐が出現し,イレウスの診断で入院した.小腸造影で,回腸に全周性の小腸狭窄を認め,鈍的腹部外傷後の遅発性小腸狭窄と診断し,手術を行った.回盲部より約60cmの小腸が9cmの長さで,肥厚性に狭窄していた.狭窄部小腸を切除した.小腸は分節状に肥厚狭窄しており,組織学的に,狭窄部位には潰瘍を伴っていた.同部位を支配する腸間膜血管の損傷による虚血が原因と考えられた.鈍的腹部外傷後のイレウス症例では,遅発性小腸狭窄の可能性も念頭において,対処することが必要である.
  • 豊田 暢彦, 村田 裕彦
    1999 年 60 巻 3 号 p. 746-749
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,ヘリカルCTによる3D構成画像(3 D-CT)が診断に有用であった回腸魚骨穿孔の1例を経験したので報告する.患者は67歳,女性.平成10年4月14日,昼頃より腹痛,嘔吐が出現し,近医にて投薬を受けたが軽快せず,翌日腹膜炎の診断で外科に紹介となった.腹部単純X線写真では異常は認められなかったが,腹部CTにて腹腔内に石灰成分を含む線状の異物を認め,さらに3D-CTにより魚骨と診断した.開腹すると回盲部より約1mの回腸に魚骨による穿孔を認め,摘出後縫合閉鎖した.経過は良好で20日目に退院した,近年の画像診断の進歩にもかかわらず,魚骨による腸管穿孔は術前診断が困難なことが多い.自験例も最初診断に難渋したが, 3D-CTにて術前診断が容易となった.以上より,原因不明の腹膜炎を認めた時,本疾患も考慮に入れた画像撮影および診断が必要であると思われた.
  • 奥村 権太, 前田 壽哉, 野崎 久充, 吉岡 輝史, 丹生谷 直樹, 岩崎 光彦
    1999 年 60 巻 3 号 p. 750-753
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は33歳男性.生来健康であった.
    突然心窩部痛が出現し,近医受診.症状は一時軽快したが,繰り返し症状が出現するために,精査目的のため当院内科入院となった.
    腹部CT検査にて,回盲部近傍の回腸内に,低吸収域を伴う腫瘍様陰影を認め,小腸造影,腹部超音波検査で下部回腸管内に長軸方向に長い腫瘍様陰影を認めた.消化管閉塞症状は認めなかったが痔痛を繰り返し,小腸重積を疑い開腹術施行した.開腹時所見は回盲部より80cm口側に小腸重積を認め,腸管内に柔らかな腫瘤を触知した.重積をハッチンソン手技で整復したところ,漿膜面に引き込みを伴う陥入を認め, Meckel憩室が完全に内翻し,これを先進部とした腸重積症であった.小腸部分切除施行し,病理組織学的所見では,憩室内に異所性胃粘膜組織の迷入を認めた.
    Meckel憩室が内翻し,これを先進部とした腸重積例は,本邦では39例の報告がある.
    若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 伊藤 元博, 大西 明生, 吉友 睦彦, 山本 眞史
    1999 年 60 巻 3 号 p. 754-757
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は33歳,男性.右下腹部痛を主訴に1995年10月12日来院した.入院後,下腹部痛の増強に加えて腹膜刺激症状が出現したため,急性虫垂炎による腹膜炎の診断にて緊急開腹した.腹腔内には少量の膿性腹水が貯留し,回盲弁より口側100cmの回腸がダグラス窩に入り込み,腸間膜付着部対側に6×4cmのMeckel憩室を認め,憩室の頸部が穿孔していた.手術は憩室を含めた回腸部分切除を施行した.病理組織学的検査にて,憩室内に異所性の胃底腺組織を認め,穿孔部は胃,回腸粘膜境界部に存在し,消化性潰瘍の像を呈していた.ギムザ染色で異所性胃粘膜からHelicobacter pyloriは検出されなかった.自験例は異所性胃粘膜から分泌される胃酸やペプシンによって胃,回腸粘膜境界部に消化性潰瘍を形成し,穿孔をきたした1例と考えられた.
  • 田中 典生, 武田 信夫, 本間 英之, 伊藤 寛晃
    1999 年 60 巻 3 号 p. 758-761
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腸管型Behçet病の2手術症例を経験した.症例1は, 59歳男性で,体重減少,食思不振で発症し入院,口腔内アフタ,外陰部潰瘍を認めBehçet病と診断された.大腸内視鏡にて終末回腸の全周性潰瘍が認められ,回盲部切除術が施行された,その6ヵ月後に吻合部を中心に潰瘍再発をきたし内科的治療にて一時軽快,しかし, 7ヵ月後に潰瘍再燃し再切除術が施行された.症例2は, 44歳女性で,不全型Behçet病の診断で治療中,汎発性腹膜炎となり緊急手術が施行された.回腸から結腸にわたる多発性潰瘍穿孔が認められ,術中内視鏡にて漿膜側からは確認困難な小潰瘍を確認の上,切除範囲を決定し,腸管切除術を施行した.
    結語.再発予防のため術中内視鏡にて微小病変を確認し切除範囲を決定すべきである.術後早期より,吻合部を中心とした小腸造影,大腸内視鏡によるfonow upが重要である.
  • 山下 巌, 廣川 慎一郎, 唐木 芳昭, 黒木 嘉人, 榊原 年宏, 塚田 一博
    1999 年 60 巻 3 号 p. 762-766
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    虫垂杯細胞カルチノイドの1例を経験したので報告する.症例は71歳,男性で腹痛,嘔気嘔吐で入院.精査にて腹水を伴う4cm大の回盲部腫瘍と回腸イレウスと診断,緊急開腹術を施行した.術中所見で腹膜播種による回腸イレウスを伴う回盲部癌と診断,回盲部切除術,回腸切除術を施行した.組織学的には虫垂杯細胞カルチノイドでp3, se, ly3, v3, n1(+), であった.術後に低濃度CDDP-5 FU療法を施行し, 9カ月間腹水の再貯留を認めず,良好な経過をたどったが, 10カ月で癌死した.虫垂杯細胞カルチノイドは稀で本邦では自験例を含めて, 52例の報告を認めるにすぎず,文献的考察を加えて報告する.
  • 高島 正樹, 増田 亮, 田中 勲, 板東 隆文, 豊島 宏
    1999 年 60 巻 3 号 p. 767-771
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    極めて緩徐な臨床経過を呈した虫垂原発粘液嚢胞腺癌の1例を経験したので報告し,過去20年間における原発性虫垂癌本邦報告例144例について文献的考察を行った.
    自験例は71歳,男性.主訴は右下腹部痛. 10年前より計3回,虫垂炎様症状を訴えて近医を受診し保存的に軽快していた.入院時右下腹部に手拳大の有痛性腫瘤が触知され,腹部超音波およびCT検査にて嚢胞性病変が疑われた.注腸造影では虫垂は描出されず,盲腸下端に管外性圧排像が認められた. CEA 41.5 ng/mlと高値なため虫垂癌を疑い,開腹術を施行した.開腹時,虫垂は同定できず,盲腸末端に黄白色調の嚢胞性腫瘤を認め,回盲部切除術を施行した.病理組織学的には粘液嚢胞腺癌(ss, ly 1, v 1, n 0)と診断された.
    高齢者における虫垂炎の診断にあたっては特に注意が必要で,慢性発症を示す例では本症も念頭に置き,画像的な検索を考慮すべきと思われる.
  • 白井 芳則, 一木 昇, 森 聡
    1999 年 60 巻 3 号 p. 772-775
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は81歳男性.便秘,左下腹部痛,左下腹部腫瘤を主訴に来院,腸閉塞の診断にて入院した.注腸検査で,直腸RsからS状結腸にかけて鋸歯像を伴った管腔の狭小化を認め, CT検査ではS状結腸間膜脂肪組織のhigh densityな索状影を伴ったlow-density volumeの増大を認めたため,腸間膜脂肪織炎と診断した.絶食, IVH,抗生剤投与により軽快し一時退院したが, 2週間後症状が再燃した.外科的治療が必要と判断し開腹したが,腸間膜脂肪織炎の所見が明らかであり,癌腫などの悪性所見を認めなかったため,生検,切除などは行わず,横行結腸にループ式人工肛門を造設した.術後,症状は速やかに回復し,以後再燃を認めていない. 1年後の注腸検査で鋸歯像は消失し,管腔の開大と壁の伸展性の回復を認めた. S状結腸間膜脂肪織炎に対して外科的治療が必要となった場合でも,人工肛門造設による病巣空置のみで病変は軽快すると考えられた.
  • 和田 雅英, 石田 秀行, 猪熊 滋久, 下村 一之, 藤岡 正志, 出月 康夫
    1999 年 60 巻 3 号 p. 776-780
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    直腸肛門部無(低)色素性悪性黒色腫としては本邦23例目,直腸肛門部悪性黒色腫と結腸癌の重複としては第1例目に相当するきわめて稀な症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.症例は79歳,男性.便秘を主訴に来院した.来院時の視診・肛門指診で肛門縁直上に灰白色, 1/4周性の隆起性病変を認めた.注腸・大腸内視鏡検査では直腸肛門部の病変のほか横行結腸に半周性の広基性隆起性病変を認めたが,両病変とも生検では悪性所見は得られなかった. 4カ月後に行った直腸肛門部の病変の再生検でGroup 5と診断され,横行結腸から肛側の結腸切除を含む腹会陰式直腸切断術 (D2) を施行した.直腸肛門部の腫瘍は1型で,組織学的検索ではS-100蛋白およびHMB-45染色陽性の無色素性悪性黒色腫と診断した.横行結腸の腫瘍はO (Is) 型,深達度mの腺腫内癌であった.術後第81病日に多発性肝転移からの腹腔内大量出血のため死亡した.
  • 石神 純也, 長谷 茂也, 中島 三郎, 夏越 祥次, 愛甲 孝
    1999 年 60 巻 3 号 p. 781-784
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    稀な5多発進行大腸癌の1切除例を経験した.症例は73歳男性で,排便時の違和感を主訴に来院し,内視鏡検査により5つの多発大腸癌が発見された.開腹時に回盲部,横行結腸,下行結腸, S状結腸,上部直腸に腫瘤が触知され, 5病変とも進行癌と判断された.回盲部および上部直腸領域のリンパ節転移が疑われたため,D2郭清を,横行結腸,下行結腸の病変にはD1郭清を伴う腸管切除術を施行した.病理組織学的には深達度はS状結腸癌はmp, 他病変はssであり,回盲部病巣は1群リンパ節に転移がみられた. p53とp21の発現を検討したところ,回盲部とS状結腸病変でp53が陽性であり, p21はいずれの病変も陰性であり,各腫瘍の増殖,進展の違いが示唆された.術後7カ月目の腹部CT検査で肝転移が発見され,抗癌剤の動注療法を施行中である. 5多発進行大腸癌は稀であり,その総腫瘍量を考えると,血行性再発への対策が必要と考えられた.
  • 鈴木 賢二, 春日 正己
    1999 年 60 巻 3 号 p. 785-789
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    39歳男性同性愛者に発症したアメーバ性肝膿瘍の1例を経験した.右季肋部の圧痛と熱発を主訴として他院から紹介され入院,肝S7に径8cmの膿瘍を認めた.エコーガイド下経皮的膿瘍ドレナージを施行したが効果はなかった.2日後,膿瘍が腹腔内に穿孔したため,開腹・腹腔ドレナージ術を施行した.その後メトロニダゾール投与を開始しこれが奏効,全身状態は改善した.ドレーンからの逆行性細菌感染を併発したため抜去時期がおくれたが抗生剤でコントロール後抜去し徒歩退院した.
    アメーバ症は本邦では1980年以降急速に増加し,その多くが男性同性愛者間でsexually transmitted amebiasisの形で流行していると考えられる.診断は血清学的検査が最も有効である.肝膿瘍をみたらアメーバ性を疑い,早期にメトロニダゾールを投与することが重要で,ドレナージは特殊な場合を除き適応にはならないと考えられた.
  • 小出 紀正, 水野 伸一, 浅野 英一, 高橋 泰夫, 下地 英機, 星 昭二
    1999 年 60 巻 3 号 p. 790-794
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    進行胃癌に合併した脾線維腫を経験したので報告する.
    症例は38歳,女性.心窩部痛を主訴に当院を受診し,上部消化管造影検査および上部消化管内視鏡検査で胃体上部から幽門部に至る4型進行胃癌と診断した.腹部超音波検査で脾腫があり,腹部CT検査では脾臓に造影効果のない境界明瞭な低吸収域を認めた,胃癌,脾転移の疑いの診断で手術を施行した.病理組織学的には胃病変は低分化型腺癌,脾病変は核異型のない線維細胞の増生した原発性脾線維腫であった.
    本邦報告例から,胃癌の脾転移巣のCT像は内部不均一な低吸収域が特徴であると考えられ,内部均一な低吸収性腫瘤像を呈した自験例は原発性脾腫瘍も疑わなければならないと考えられた.
  • 渡部 克也, 山崎 安信, 須田 嵩, 望月 康久, 牧野 達郎, 岡田 賢三
    1999 年 60 巻 3 号 p. 795-801
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,大腸癌術後に孤立性脾転移を来たし脾臓摘出術を施行した2例を経験したので報告する.(症例1) 56歳女性.平成4年8月12日,胆嚢結石症および盲腸癌の診断で胆嚢摘出術と結腸右半切除術を施行(中分化腺癌, P0, H0, se, n2, ly3, v1,stage IIIb). 平成5年4月12日(術後8カ月)孤立性脾転移の診断で脾臓摘出術を施行した.脾摘後約1年1カ月で癌性腹膜炎のため死亡した.(症例2) 51歳女性.平成5年10月にS状結腸癌でS状結腸切除術を施行(中分化型腺癌, P0, H0, sm, n0, ly0, v0,stage I).平成9年6月23日(術後3年8カ月)脾臓摘出術を施行した.現在多発性腹腔内転移を来し,外来経過観察中である.孤立性脾転移の2例に対し脾臓摘出術を行ったがいずれも多臓器転移を来しており,脾摘後の予後は決して良好ではないと考えられた.
  • 西村 謙吾, 古本 豊和, 新田 晋, 岡 淳夫, 中尾 守次, 西村 興亜, 安達 博信
    1999 年 60 巻 3 号 p. 802-806
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腸間膜原発の悪性線維性組織球腫(MFH)の1例を経験したので報告する.
    症例は65歳の男性で,右下腹部腫瘤を主訴に1997年9月当院に入院した.腫瘤は下腹部のやや右側にあり,大きさ10×15cmで可動性に乏しく,軽度圧痛を伴っていた.血液検査ではフェリチンが上昇していた.腹部CT検査では,腫瘤は内部が均一な嚢胞部と不均一な充実部から成り,腸間膜との境界は不明瞭であった.血管造影検査では,回腸動脈にencasementを認めた.以上より腸間膜原発非上皮性悪性腫瘍を疑い,回腸35cmと膀胱壁の一部の合併切除を伴う広範囲切除を施行した.病理組織学的には腸間膜原発のMFHと診断された.術後患者に化学療法を施行し,術後11カ月の現在再発の兆候なく経過観察中である.
  • 宮倉 安幸, 金高 伸也, 石井 誠之, 加納 正道, 宮下 正俊, 重松 貞彦
    1999 年 60 巻 3 号 p. 807-810
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は70歳男性.夕食後,突然の腹痛にて当院受診となる.腹部外傷,腹部手術の既往はない.腹部X線写真上著明な鏡面像を伴う拡張した小腸ガス像を認めイレウスの診断にて入院となる.入院後イレウスチューブで減圧施行,イレウスチューブからの造影にてトライツ靭帯より約100cmの空腸に狭窄部位を認めた.その先にはチューブは挿入不可能であった.狭窄改善せず外科紹介となり手術施行となる.手術所見では少量の腹水を認めた.トライツ靭帯より約100cmの空腸係締が約40cmにわたり大網の癒着により形成された大網裂孔に陥入し拡張していた.異常癒着を切離してイレウスを解除,手術を終了した.術後経過順調にて現在外来通院中である.大網によるイレウスは稀に経験されるが,今回われわれは大網癒着により形成された大網裂孔にてイレウスを生じた1例を経験し,若干の文献にて検討したので報告する.
  • 朴 英智, 金子 十郎, 阿部 英雄, 池田 太郎, 臼井 亮平, 福澤 正洋
    1999 年 60 巻 3 号 p. 811-816
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    特発性大網捻転症の本邦報告は43例と稀な疾患である.今回われわれは特発性大網捻転症の1例を経験したので報告する.症例は78歳,男性.ゲートボール中に大腹部痛出現し,腸閉塞の診断にて他院入院するも右側腹部痛・腹部膨満感持続し当院紹介入院となる.腹部超音波検査にて胆嚢胆石・総胆管拡張および右側腹部に6×2.5cmの内部low echoicな楕円状の腫瘤を認め急性虫垂炎・限局性腹膜炎の診断のもとに緊急手術を施行した.虫垂は炎症所見に乏しく淡血性の腹水を中等量認めたため,虫垂切除後に腹腔内を検索すると,臍上部腹膜に暗褐色調の大網腫瘤の癒着を認めた.大網腫瘤の頸部に右方向2.5回の捻転を認め,健常部を含め捻転部以下の大網を切除した.病理所見では,脂肪組織全体の急性循環障害を認めた.
    自験例を含めた本邦報告44例について文献的考察を加え検討した.
  • 桜井 健一, 秦 怜志, 柴田 昌彦, 大原 守貴, 森 健一郎, 福澤 正洋
    1999 年 60 巻 3 号 p. 817-821
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,女性.昭和52年に子宮癌で広汎子宮全摘術を施行され,術後放射線治療を受けた.平成8年1月,左上腹部痛を主訴に当院受診した.腹部単純X線上niveauを認めたため,腸閉塞症の診断にて入院となった.腹膜炎症状が認められなかったため, ileus tubeを挿入した.入院後2日目になって患者自らileus tubeを切断したため,以降保存的に経過をみていた.入院7日目にX線上tubeの移動がみられなくなったため, ileus解除・ileus tube抜去の目的で開腹手術を施行した.その結果,薬剤包装用PTPが原因となった穿孔性腹膜炎による腸閉塞であったことが判明した.手術は穿孔部を含めた回腸を切除し,切除部よりileus tubeを抜去後,腸管の端々吻合術およびドレナージ術を施行した.
    今後,高齢化社会にむけて薬剤包装様式の工夫が必要と思われる.
  • 藤竹 信一, 野崎 英樹, 清水 稔, 前田 佳之, 片岡 将
    1999 年 60 巻 3 号 p. 822-826
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は83歳,女性.平成9年7月22日,子宮癌手術後の癒着性イレウスの診断で当院消化器科に入院し保存的治療がなされた. 25日腹膜刺激症状が出現し白血球数, CRPも高値となり緊急開腹手術を施行した.大量の膿性腹水が貯留し壁の脆弱化した膀胱が破裂しているのが認められた.子宮癌術後に放射線治療を受けており放射線性膀胱炎が原因と考えられた.膀胱破裂部を縫合閉鎖し,イレウスの原因としては汎発性腹膜炎による腸管麻痺の他,炎症性変化の高度な回腸の狭窄等も考えられ,これを切除し回腸瘻を造設した.その後,回腸瘻閉鎖,回結腸吻合術を施行し,しばらくは排便の調節に難渋したが,平成10年3月2日退院した.膀胱自然破裂は稀で,今回,放射線性膀胱炎を原因とする1例を経験したので本邦報告例14症例と共に検討を加えた.本疾患は急性腹症の診療にあたる外科医が遭遇する可能性があると思われる.
  • 林 智彦, 松木 伸夫, 堀地 肇, 熊木 健雄, 島 弘三
    1999 年 60 巻 3 号 p. 827-830
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は58歳女性.全身倦怠感を主訴に来院.腹部CTにて後腹膜腫瘍を指摘された. MRI, 血管造影検査を施行したところ同部位に10×5cmの腫瘍を認め,生検病理は傍神経節腫であった.以上より後腹膜に発生した傍神経節腫と診断し腫瘤摘出術を施行した.腫瘤は腎,尿管とは離れており容易に摘出可能であった.病理所見では紡錘型細胞の胞巣状増生と周囲の血管腔と脂肪細胞の混在を認め, HMB 45染色で陽性であったため血管筋脂肪腫と診断された.術後再発なく経過中である.今回,後腹膜に発生した非常に稀な血管筋脂肪腫を経験した.過去10年間の本邦報会例は2例のみで本症例は3例目であった.
  • 杉野 圭三, 吉岡 伸吉郎, 柴田 諭, 丸林 誠二, 八幡 浩, 浅原 利正, 土肥 雪彦
    1999 年 60 巻 3 号 p. 831-835
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    極めて稀な後腹膜原発骨外性骨肉腫の1例を経験した.症例は49歳男性,左側腹部痛で来院, CT検査で左後腹膜に最大径16cm,重量1,930gの巨大腫瘤を認め,脾,左腎,下行結腸とともに合併切除施行した.病理検査で骨肉腫と診断された. 6カ月後に肺転移を認め,胸腔鏡で右S2の部分切除を施行したが,再手術11カ月後に右肺に再発を認め,初回手術より1年9カ月目に死亡した.後腹膜原発骨外性骨肉腫は文献的にこれまで自験例を含め14例が報告され,追跡調査を行った結果,全例再発,転移で死亡していたことを確認した.
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