日本臨床外科学会雑誌
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乳腺のadenomyoepitheliomaの1例
佐川 庸窪園 隆明比 俊中村 太郎坂東 康生
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1999 年 60 巻 3 号 p. 656-660

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抄録
症例は82歳,女性.右乳房D領域に1.5cm大の可動性のある硬い腫瘤を触知し,当科受診した.超音波像では境界比較的明瞭で,内部低エコー,縦横比0.7であった.穿刺吸引細胞診では乳管上皮の集塊がみられ,クロマチンも増量しているためductal carcinomaも疑われたが,比較的小型核でありClass IIIであった.局所麻酔下にwide excisionを施行. HE染色像では構成成分が導管上皮とそれを取り囲む筋上皮成分よりなる境界明瞭な腫瘍で, adenomyoepithelioma (腺筋上皮腫)と診断された.免疫組織化学染色ではepithelial membrane antigenとcytokeratinが腺上皮において陽性であり,一方筋上皮に対してはS-100 proteinとα-smooth muscle actinとが陽性であった.乳房の腺筋上皮腫は稀な疾患であり,自験例では細胞分裂像や異形細胞が認められないことより良性と診断したが,局所再発や遠隔転移例の報告も散見されることから,今後経過観察を要すると思われた.
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