1999 年 60 巻 6 号 p. 1505-1509
気管分岐部から右中間幹に浸潤した扁平上皮癌に対し,気管分岐部管状切除を伴う右肺全摘術を施行した1例を報告する.症例は69歳男性.糖尿病,高血圧,塵肺にて近医通院中であったが,労作時呼吸困難を自覚するようになり,当院内科入院となった.胸部X線で右上葉の無気肺があり, CT, MRI 所見では右肺門部に腫瘤影があり,右主気管支,中間幹内腔へ浸潤していた.気管支鏡所見では気管分岐部直下から左中下葉分岐部まで腫瘍浸潤を認めた.手術は右第5肋間開胸で行った.腫瘍の血管系への浸潤はなかったが,気管支浸潤部の完全切除のために気管分岐部管状切除を伴う右肺全摘術を施行した.気管は分岐部より2軟骨輪,左主気管支は1軟骨輪切除し,気管-左主気管支をテレスコープ型に結節縫合した.吻合部は心膜周囲脂肪組織で被覆した.病理組織学的には高分化型扁平上皮癌で最終病期はt4n0m0 stage IIIb であった.吻合部治癒良好で,術後15カ月非担癌生存中である.