日本臨床外科学会雑誌
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小腸壊死をともなった外傷性遅発性横隔膜ヘルニアの1例
佐野 勝英田中 和郎矢野 文章黒田 陽久大平 洋一高橋 恒夫
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1999 年 60 巻 6 号 p. 1514-1518

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抄録

鈍的胸腹部外傷と下肢多発骨折の9日後に腸閉塞症状で発症した外傷性横隔膜ヘルニアの1例を経験したので報告する.症例は64歳,男性.交通事故で全身を打撲しショック状態にて来院,胸部CT検査で右血気胸と左血胸を認め,ドレナージを行った.また下肢の多発骨折を合併しており,全身状態が落ち着いたところで観血的整復固定術を行った.入院9日頃より腹部膨満,嘔気嘔吐を認め,翌日の胸腹部X線写真で拡張した小腸と胸腔内の消化管ガス像を認めたため外傷性横隔膜ヘルニアを疑い,緊急手術を施行した.開腹時左横隔膜後側方に裂孔を認め大網と横行結腸が胸腔内に嵌入し,円手的に還納した.また10cmにおよぶ回腸の壊死を認め,これが腸閉塞の原因と考え腸切除を行った.本症例は外傷性の腸管損傷が経時的に腸管壊死となり腸閉塞を併発,腹腔内圧が上昇し横隔膜損傷部から腸管が脱出し,遅発性の横隔膜ヘルニアを発症したものと考えられた.

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