1999 年 60 巻 6 号 p. 1519-1523
特発性食道破裂は比較的稀な疾患であり,早期に適切な処置が行われないと重篤な経過をたどるとされる.われわれは本症の2手術例と1保存的治療例を経験した.手術は, 1例が縫合閉鎖術, 1例が縫合部に有茎大網弁で被覆術を追加した. 2例とも縫合不全を認めず軽快した.保存的治療例は85歳,男性で本邦報告例最高齢であった.縦隔・胸腔ドレナージも要さず,軽快した.
1993年から1997年までの本邦報告例(自験例3例を含む) 78例の集計では, 24時間以内に手術が施行された症例において,直接縫合閉鎖術の群と縫合部被覆術の群との間で縫合不全発生率に有意差を認め,後者の群で有意に低かった.死亡例は6例で,その内3例は直接縫合閉鎖術が行われ縫合不全を合併した症例であった.発症早期診断例においても,縫合部に何らかの被覆術を追加することが望ましいと考えられた.