1999 年 60 巻 6 号 p. 1562-1565
悪性変化を伴う盲腸villous tumorと虫垂粘液嚢胞腺癌が近接して併存していた1例を経験した.患者は59歳女性.当院整形外科にて大腿骨頭置換術後のfollow up目的で撮影された腹部CTで回盲部に6×7cmの嚢胞状腫瘤が発見され回盲部嚢胞性腫瘍の診断で手術を施行した.開腹所見では,盲腸の虫垂開口部に同部位を閉塞する小児手拳大,弾性軟の腫瘍と,それに連続し嚢胞状に著明に腫大した虫垂を認め,結腸右半切除術を施行した.切除標本の肉眼所見では,虫垂開口部に近接した盲腸に4.5×6cmで全周性に発育したvillous tumorを認め,正常粘膜を介して開口部より約1cm末梢の虫垂粘膜面に,径1cmの黄白色で硬い隆起性病変を認めた.また虫垂内腔は多量の粘液物質で満たされていた.病理組織学的に,盲腸の病変は絨毛腺腫と高分化型腺癌が混在しており,虫垂の隆起性病変は粘液嚢胞腺癌であった.両者は組織学的には独立して存在する重複癌であった.