日本臨床外科学会雑誌
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日本住血吸虫症併存肝細胞癌の3例
行方 浩二高森 繁奥山 耕一児島 邦明深澤 正樹別府 倫兄二川 俊二
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1999 年 60 巻 6 号 p. 1612-1617

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抄録

教室において日本住血吸虫症(日虫症)併存肝細胞癌の3例を経験した.症例1は67歳,男性.福岡県・久留米市出身.肝硬変(HBV+)・S8原発性肝細胞癌(HCC)の診断にて前区域切除術を施行した.症例2は51歳,男性.福岡県・久留米市出身.肝硬変(HBV+)・S6 HCCの診断でS6部分切除を施行した.症例3は57歳,男性.山梨県・石和市出身.肝硬変(HCV+)・日虫症・S8 HCCの診断でS8亜区域切除術を施行した.病理組織学的に,症例1, 2は日虫症を伴った中分化型のHCC,症例3は日虫症を伴った高分化型のHCCと診断された.症例1, 2はHBVの,症例3はHCVの感染を認めている.日虫症は1996年2月,一応の終息宣言がなされたが,今日でも日虫症による肝疾患が認められ,いまだ肝細胞癌との因果関係は一定の見解が得られていない.今後,日虫症と肝細胞癌の因果関係を考察するうえで,肝炎ウイルスの関与を念頭におくことが重要であると思われた.

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