1999 年 60 巻 6 号 p. 1623-1628
胆嚢癌において比較的稀な組織型である腺扁平上皮癌を経験したので報告する.症例は60歳,女性.食後心窩部痛を主訴に近医を受診し,腹部US検査, CT検査, ERC検査にて胆嚢癌と診断され当院に紹介入院となった.病変は胆嚢頸部に4.0×2.5cmの乳頭状,広基性病変と,肝床側体部に2.0×1.5cmの結節状隆起病変が認められ,径1.2cmの結石を伴っていた.手術は胆嚢摘出,胆管切除,肝S1, S4a, S5部分切除を施行し, Roux-en Y法で胆管空腸吻合を行った.腫瘍の病理組織所見で乳頭状の部分は粘膜内に限局した高分化腺癌であり,結節状の部分は漿膜下層まで浸潤した高分化扁平上皮癌であった.腺癌と扁平上皮癌との境界部では腺癌の基底膜側より扁平上皮化生が生じている像が認められ,扁平上皮癌はその下層に浸潤していた.胆嚢上皮に腺扁平上皮癌が生ずる起源としては腺癌の扁平上皮化生が考えられた.