日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
急性ループス腹膜炎の1例
成田 洋中村 司羽藤 誠記伊藤 昭敏真辺 忠夫
著者情報
キーワード: ループス腹膜炎, 腹膜炎
ジャーナル フリー

1999 年 60 巻 6 号 p. 1663-1667

詳細
抄録

麻痺性イレウスとの鑑別に苦慮したループス腹膜炎(Lupus Peritonitis)の1例を経験した.患者は34歳,女性.既往歴に虫垂切除術.また1年前よりSLEの診断にて他院通院中である. 2日前より腹痛が出現,麻痺性イレウスの診断にて経過観察していたが次第に腹膜刺激症状を伴ってきたため絞扼性イレウスも否定できず開腹術を施行した.手術所見は,多量の黄色透明の腹水と,小腸全体の漿膜炎様発赤,腫脹を認めたのみであった.基礎疾患にSLEを有していることより急性ループス腹膜炎にもとつく麻痺性イレウスと診断し術後よりステロイドを投与したところ腹部症状は完全に消失した.
ループス腹膜炎は内科的に治療し得る腹膜炎であり,無用な開腹術を避けるためにもSLEの既往を有する患者,とりわけ若年および中年女性患者での急性腹症にはループス腹膜炎も鑑別診断の一つに加える必要があると考えられた.

著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top