1999 年 60 巻 6 号 p. 1663-1667
麻痺性イレウスとの鑑別に苦慮したループス腹膜炎(Lupus Peritonitis)の1例を経験した.患者は34歳,女性.既往歴に虫垂切除術.また1年前よりSLEの診断にて他院通院中である. 2日前より腹痛が出現,麻痺性イレウスの診断にて経過観察していたが次第に腹膜刺激症状を伴ってきたため絞扼性イレウスも否定できず開腹術を施行した.手術所見は,多量の黄色透明の腹水と,小腸全体の漿膜炎様発赤,腫脹を認めたのみであった.基礎疾患にSLEを有していることより急性ループス腹膜炎にもとつく麻痺性イレウスと診断し術後よりステロイドを投与したところ腹部症状は完全に消失した.
ループス腹膜炎は内科的に治療し得る腹膜炎であり,無用な開腹術を避けるためにもSLEの既往を有する患者,とりわけ若年および中年女性患者での急性腹症にはループス腹膜炎も鑑別診断の一つに加える必要があると考えられた.