1999 年 60 巻 9 号 p. 2458-2462
症例は2歳11カ月の男児.激しい腹痛と発熱を主訴に近医を受診し,腹膜炎の診断で当院へ紹介された.初診時,腹部は緊満し,臍部右側に6cm大の圧痛を伴う腫瘤を触知した.血液検査で貧血を認め, AFPは3.246ng/mlと高値を示していた.緊急腹部CT検査で臍部より連続した6×4cmの充実性腫瘤と腹水を認めたため,腹腔内腫瘤の破裂の診断にて緊急手術を施行した.術中所見では血性腹水を認め,臍部より連続した腹膜外腫瘍の腹腔内への破裂であった.腫瘍は正中臍ヒダと連続しており尿膜管原発と考えられた.病理所見ではyolk sac tumorの診断であった.術後化学療法(PVB)を施行し,術後1年目の現在まで完全寛解が継続している.尿膜管原発の yolk sac tumorは極めて稀であるので,文献的考察を含めて報告した.