日本臨床外科学会雑誌
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鼠径部子宮内膜症の1例
生田 真一上藤 和彦市倉 隆上野 秀樹望月 英隆
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1999 年 60 巻 9 号 p. 2463-2468

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抄録

症例は48歳,女性. 40歳時,子宮筋腫にて単純子宮全摘術を施行された.平成10年l月,右鼠径部の無痛性腫瘤を主訴に当院受診.右鼠径部に可動性の乏しい,母指頭大の硬い腫瘤を触知した.腫瘤は超音波上1.8×1.6×1.3cm大の低エコー病変として認められ,臨床的に腫脹リンパ節と診断した.同部に対し施行した穿刺吸引細胞診では,リンパ球成分が乏しく,異型性は弱いものの多数の腺上皮細胞を認め,転移性腺癌が疑われた.注腸造影,腹部および経膣超音波,骨盤部CTなどを施行したが原発巣は同定されず,同年3月,右鼠径部の母指頭大腫瘤の切除術を施行した.腫瘤は周囲と強固に癒着していた.組織学的には,周囲の広範な線維化の中に内膜間質を伴う内膜腺管の増殖像が認められ,子宮内膜症と診断された.子宮内膜症発生部位のうち鼠径部は約0.4%と稀で,本例に文献的考察を加え報告した.

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