抄録
Diabetic mastopathyは本邦での報告は少なく,臨床上,乳癌との鑑別が困難とされる疾患である.今回,本症の3例を経験したので報告する.【症例】全例女性,平均年齢62.3歳(53~77歳).平均糖尿病治療期間18.3年(5~30年),インスリン使用は3例中2例.触診は全例腫瘤を認め,平均腫瘤径23.6mm大(11~45mm)であった.超音波は境界不明瞭,内部エコー不均一な腫瘤で,マンモグラフィは1例のみ等濃度の腫瘤陰影を認めた.術前細胞診は全例陰性だった.病理組織像は“epithelioid fibroblasts”, “lymphocytic lobulitis”, “keloid like features”を全例に認め本症の診断を得た.【考察・結語】本症は臨床上,乳癌との鑑別が困難な場合があり,生検を行うことが多い.長期糖尿病患者では,本症の存在を念頭におき診療すべきと思われた.