2000 年 61 巻 11 号 p. 3095-3098
血液凝固線溶系因子の先天異常としてこれまでに先天性アンチトロンビンIII (AT III), プロテインC (PC), プロテインS (PS), プラスミノーゲン欠損症ならびに分子異常症,また異常フィブリノゲン血症などが報告されている.これらは先天性血栓傾向と言われ,深部静脈血栓症,肺塞栓症,上腸間膜静脈血栓症など種々の血栓症を惹起することが知られている.特にプラスミノーゲン分子異常症 (dysplasminogenemia: DPG) は日本人の約3.6%にみられる頻度の高い異常である.今回われわれはプラスミノーゲン欠損・分子異常症を合併したと考えられる閉塞性動脈硬化症 (ASO) 症例に対し, PTFE人工血管を用いて右腋窩両大腿動脈バイパス術 (Ax-biF), 左大腿膝窩動脈バイパス術 (F-P), 右深大腿動脈血管形成術 (PTA) を行い合併症なく経過したので報告する.