日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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61 巻, 11 号
選択された号の論文の55件中1~50を表示しています
  • 山川 卓, 宇田川 潔, 谷木 利勝, 福井 康雄, 奥村 和正, 山崎 信保, 中村 敏夫, 三木 明
    2000 年 61 巻 11 号 p. 2853-2857
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    乳房温存療法(BCT)における乳房内再発の重要な因子である断端状況を検討するとともにprobe lumpectomy (PL)の有用性を検討した.対象は1993年~1999年9月,当院で経験したBCT78例. PLは局麻下,切除範囲は乳頭側1.5cm,その他1.0cm.摘出標本は多数切片にて癌の拡がりを検討,約1週後入院全麻下で陽性例は追加切除+腋窩郭清あるいは乳切除術,陰性例は腋窩郭清とした.最終断端陽性率は21.8% (17/78),内訳はPL6.1% (2/33),非PL33.3% (15/45)であった(p<0.005).乳房内再発は2例,共に断端陽性,非PLであった.術前,術中に癌の拡がりを予測するmodalityとしては, MRI, CT,迅速組織診等が挙げられるが十分な成績ではない. PLにて予め正確な断端状況を把握することは,最終的な断端陰性獲得のみならずInformed Consent取得にも有用であった.
  • 上原 正弘, 藤田 益嗣, 松村 博臣, 飯塚 亮二, 宮田 圭悟, 井川 理, 藤井 宏二, 高橋 滋, 泉 浩, 竹中 温
    2000 年 61 巻 11 号 p. 2858-2863
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    乳癌症例のthymidylate synthase (TS), dihydropyrimidine dehydrogenase (DPD)を検討した.
    正常組織と腫瘍組織の比較でTSは,腫瘍組織が高値を示し(p=0.0211), DPDは腫瘍組織が高い傾向を示した. TSは, stage I+stage II (以下stageを省略)で腫瘍組織が高値を(p=0.0288),腫瘍組織内では, I+IIが高値を示した(p=0.0345). DPDは, IH+IVで腫瘍組織が高値を示した(p=0.0066). n0でTSは腫瘍組織が正常組織より高い傾向を示した(p=0.0601). t1+t2でTSは腫瘍組織が高値を示し(p=0.0278),腫瘍組織内でt1+t2が高値を示した(p=0.0227).組織型でTSは粘液癌が他より高値を示した.以上より, TSは抗腫瘍効果の指標となるが生物学的悪性度を示さない可能性が示唆された.
  • 井上 康一, 谷口 正美, 田島 隆行, 杉田 輝地
    2000 年 61 巻 11 号 p. 2864-2869
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    大腸憩室出血は自然止血しやすい反面再発する危険性も高い.われわれは過去3年6カ月間に,大腸憩室からの出血11例(男8例,女3例,平均70歳)に対し血管造影を行いそのうち10例に経カテーテル動脈塞栓術(TAE)を行っているので,その有用性を検討した.
    出血部位は上行結腸7例,S状結腸3例で, 7例に造影剤の血管外漏出が見られた. 3例は拡張した血管を認めたため合計10例に, microcoilによる塞栓術を行った.初期の3例は辺縁動脈あるいはその中枢側を,その後の7例はvasa rectaを塞栓したが,腸管の壊死や狭窄は見られなかった. 10例中1例が6カ月後に再出血したが,再度塞栓術を行い,止血した.手術は1例も行っていない.他病死した1例を除き健存している.
    大腸憩室出血に対する動脈塞栓術(TAE)は手術に変わりうる有効な治療法と思われるが,今後の経過観察により長期的な予後を検討していく必要がある.
  • 加藤 秀明, 伴登 宏行, 田畑 敏, 家接 健一, 土田 敬, 山下 良平, 清原 薫, 酒徳 光明, 中島 久幸, 小杉 光世
    2000 年 61 巻 11 号 p. 2870-2873
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    Prolene™ hernia systemを用いた成人鼠径ヘルニア修復術後の合併症について検討した.対象は1998年9月から1999年12月までに当科で手術した鼠径ヘルニア患者68例75側.男性47例,女性21例,平均年齢は68.8歳であった.合併症は,皮下漿液腫10側(14.7%),血腫2側(2.9%)であった.いずれも保存的治療で軽快し,感染,再発は認めていない.また,術後愁訴についてアンケートを行い,回答のあった46例について検討した.手術後の痛みは約1週間で消失,日常生活への復帰期間は約2週間であった.術後の痛みについては,「思ったよりひどくなかった」という回答が51%,メッシュの違和感については「まったく感じない」という回答が55.1%であった.以上より,成人鼠径ヘルニアに対しPHSを用いた修復術は術後愁訴の少ない良い手術法と考える.
  • 九冨 五郎, 下段 光裕, 足立 英明, 小澤 桂子, 近藤 正一, 八十島 孝博, 秦 史壮, 平田 公一
    2000 年 61 巻 11 号 p. 2874-2879
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    当院では1988年の開院以来小児鼠径ヘルニアに対して日帰り手術を行っている.そこで今回,患児の家族へのアンケートを中心にday surgeryシステムについて再検討を行った.
    1995年の問診表導入以降に当院で日帰り手術を行った55症例に対し,アンケートを郵送し回答の得られた42例に対して検討を行った.
    アンケートの結果92.5%の患者が日帰り手術に対しては良かったという回答が得られた.一方で42.9%の患者が日帰り手術に対して不安を持っており, 14.3%の患者が病院側の説明で十分に日帰り手術を理解できなかったという回答が得られた.
    当院における小児鼠径ヘルニアのday surgeryシステムは患者のニーズに即した治療法であるが,今後はさらに患者側へのday surgeryに対する認識と安全性を理解してもらうよう努めなければならない.
  • 尾方 章人, 藤本 泰久, 高島 勉, 有本 裕一, 東野 正幸
    2000 年 61 巻 11 号 p. 2880-2884
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,女性.右上肢,頸部の腫脹を主訴として来院. 34歳時より甲状腺腫を指摘されていたが経過観察中であった. 61歳時には慢性腎不全に対して,右前腕にシャントを留置している.その後,徐々に右上肢,頸部の腫脹が増強した.胸部X線像にて上縦隔に腫瘤陰影を認め, MRI像で右頸静脈が右鎖骨下静脈との合流部付近で腫瘍により圧排狭窄され,血流のうっ滞を認めた.各種画像診断より巨大縦隔内甲状腺腫による上大静脈症候群と診断された.甲状腺亜全摘術が施行され,病理組織所見は腺腫様甲状腺腫であり,術後右上肢の腫脹は消失した.上大静脈症候群を呈するもののほとんどが肺癌であり,甲状腺疾患によることは稀である.今回,その発症にシャントによる静脈圧の上昇も関与したと考えられ,シャント手術を行う際に甲状腺疾患にも注意を払うべきと考えられた.
  • 北川 亘, 清水 一雄, 赤須 東樹, 豊島 宏二, 田中 茂夫
    2000 年 61 巻 11 号 p. 2885-2890
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    原発性上皮小体機能亢進症に対しガンマプロープ(Navigator®)を使用しradio-guided parathyroidectomyを施行した2例を経験した.症例1は, 52歳女性で術前頸部ECHO, CTでは局在不明瞭で, 99mTc-MIBIシンチグラフィでは左下上皮小体腫瘍の疑いであった.症例2は, 66歳女性で42歳時バセドウ病で甲状腺亜全摘術の既往がある.頸部CT, MRIで右下上皮小体の病変が疑われ, 99mTc-MIBIシンチグラフィでは局在不明瞭であった.術前99mTc-MIBIを静注し,全身麻酔下で術前,術中ガンマプローブを用い,症例1は左下, 症例2は左上のradioactiveな上皮小体腫瘍を摘出した.摘出した上皮小体腫瘍は,それぞれ症例1では大きさ11×6mm,重さ410mg,症例2では17×14mm, 361mgであり共に病理組織診断は腺腫であった.
    ガンマプローブは病的上皮小体の局在を術中診断でき,病変の取り残しを防ぐことができ低侵襲で美容上利点があると考えられた.
  • 池田 昌博, 杉野 圭三, 山中 達彦, 松田 正裕, 安澤 紀夫, 浅原 利正, 田村 泰三
    2000 年 61 巻 11 号 p. 2891-2894
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は76歳女性で,左前頸部腫瘤を主訴に来院.甲状腺左葉に7.5cm×4.5cm大の硬い腫瘤を認めた.穿刺吸引細胞診で甲状腺乳頭癌と診断された.以上より甲状腺亜全摘術および頸部リンパ節郭清を実施した (T4, Ex2, Nla). 巨大な腫瘍およびリンパ節が左側の反回神経を巻き込んでおり左反回神経の温存は不可能であった.反回神経の再建を試みたが,左反回神経の中枢断端は同定不能で反回神経の端々吻合は実施できず,左頸神経ワナは腫瘍に圧排され利用不可能であったため,右頸神経ワナを気管前を左側に誘導し左反回神経末梢断端と吻合した.術後左反回神経麻痺による頓声を認めたが時間の経過とともに軽快し,5カ月後には患者も満足する程度にまで改善した.対側の頸神経ワナと反回神経末梢断端の端々吻合による反回神経再建術は,術後の発声機能の改善に有用であると考えられた.
  • 高橋 広城, 成田 洋, 小林 建司, 羽藤 誠記, 伊藤 昭敏, 真辺 忠夫
    2000 年 61 巻 11 号 p. 2895-2899
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    von Recklinghausen病に合併した頸部仮性動脈瘤の1例を経験したので報告する.症例は60歳の男性で左肩痛,左頸部腫脹を主訴に当院救急外来を受診した.精査にて左鎖骨下動脈の一分枝の自然断裂と仮性動脈瘤の存在が判明し,緊急手術を施行した.手術所見では,左甲状頸動脈が根部で離断しかかっており,同部位に仮性動脈瘤の形成がみられた.甲状頸動脈を根部で結紮し,止血し得た.術後経過は順調で,術後2年2カ月の間再出血を認めていない.von Recklinghausen病は時に血管病変を伴うが,動脈瘤や動脈の自然断裂を来すことは稀で本邦では動脈瘤17例,動脈の自然断裂18例の報告を数えるのみであった.
  • 八次 浩幸, 松本 敦, 荒木 靖三, 貝原 淳, 安永 昌史, 林 克実, 山内 健嗣, 磯本 浩晴, 青柳 成明
    2000 年 61 巻 11 号 p. 2900-2905
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,女性.左乳房のしこりに気付き来院.左乳房C領域に可動性良好の腫瘤を触知.超音波検査では大きさ12×9×8mmの境界明瞭で内部やや不均一の低エコーを呈した.さらにMammographyでは左乳房に一部不整像を呈する所見を認めた.穿刺吸引細胞診では比較的多数の細胞が認められ核小体もみられclass IIIの診断で局麻下にexcisional biopsy施行し病理組織診の結果ductal carcinomaの診断にて根治術施行.病理診断ではDuctal carcinomaとしたが, tumor cellはS-100蛋白やHHF-35に陽性を示しさらに脈管侵襲像も見られたため悪性adenomyoepitheliomaと診断とした.本症例は病理,電顕像が有用であり,また悪性を呈する報告は本邦では2例のみであり極めて稀な疾患である.
  • 原田 洋明, 木村 正美, 松下 弘雄, 兼田 博, 久米 修一, 上村 邦紀
    2000 年 61 巻 11 号 p. 2906-2909
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は86歳女性,下肢の浮腫と全身倦怠感のため近医を受診し,右乳房の腫瘤を指摘されて当科紹介受診となった.初診時,右乳房全体を占める超手拳大・弾性硬の腫瘤を認め,一部皮膚に潰瘍を形成していた.腫大した腋窩リンパ節も多数触れ,乳癌の腋窩リンパ節転移の診断で乳房切除および腋窩リンパ節郭清を行った.術前より原因不明の汎血球減少を認めていたが,術後に切除部皮下に出血を認め,再手術にて止血した.この時施行した胸骨の骨髄穿刺では骨髄異型性症候群: myelodysplastic syndromeと診断された.術後は約1週間輸血を必要としたが汎血球減少は徐々に改善しその後輸血は術後9カ月の現在まで必要としていない.本症例は,重複癌において一方の乳癌の治療によりもう一方のMDSが改善されたと推測されたため報告する.
  • 康 雅博, 道清 勉, 藤川 正博, 藤井 眞, 江本 節, 吉川 澄
    2000 年 61 巻 11 号 p. 2910-2913
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    稀な疾患である乳腺紡錘細胞癌の1例を経験した.症例は46歳の女性,左乳房の無痛性腫瘤を主訴に来院した.通常型乳癌と診断し胸筋温存乳房切除術(Bt+Ax)を施行した.術後の病理組織診断は紡錘細胞癌であった.免疫組織染色ではvimentin, EMA陽性であった.腋窩リンパ節転移は認めず, t2n0m0 stage IIであった.術後14カ月の現在,再発の徴候は認めていない.紡錘細胞癌は上皮性の悪性腫瘍でありながら,その細胞の形態が紡錘形であり,一見肉腫様の構造を示す稀な乳腺腫瘍である.自験例を含む本邦報告例62例を集計し,臨床的特徴について検討した.通常型乳癌に比し,腫瘍径が大きく,一方でリンパ節転移は軽度の傾向があった.また嚢胞形成を多く認めた.治療予後に関しては見解が一定していないが,早期に血行性転移を認める症例が多く,注意深い観察が必要と思われた.
  • 清水 鉄也, 児嶋 哲文, 北城 秀司
    2000 年 61 巻 11 号 p. 2914-2917
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は55歳女性,右乳房腫瘤,乳房痛にて当科受診した.触診上,右乳房A領域に1.0cm大の弾性軟,境界不明瞭な腫瘤を触知した.超音波検査上乳頭腺管癌が疑われたためcore needle biopsyを施行,浸潤性乳管癌の診断であった.右乳房扇状部分切除術,腋窩リンパ節郭清術を施行し,病理組織学的に腺様嚢胞癌の診断を得た.本疾患の予後は比較的良好といわれており,確実に切除断端を陰性に出来れば乳房温存手術が推奨されるが,厳重な経過観察が必要である.
  • 近藤 大造
    2000 年 61 巻 11 号 p. 2918-2921
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    比較的まれな頸部から縦隔にかけての嚢胞状リンパ管腫を経験した.
    患者は70歳男性, 3年6カ月前に左原発性肺癌で根治術を施行し,無再発生存中,定期検査で,左頸縦隔部に左総頸動脈,左鎖骨下動脈を巻き込む腫瘤を発見した.超音波検査で多房性嚢胞状で有ることから,肺癌の再発よりリンパ管腫を疑い手術した.頸部カラー状切開と胸骨正中切開でアプローチした.腫瘍は甲状腺上極より3cm頭側から大動脈弓まで,後内側は食道の背側,椎体の前面右側まで達し,左総頸動脈,鎖骨下動脈は,腫瘍を切開して剥離した.また,以前の肺癌の手術で上縦隔リンパ節郭清をしてあったため,剥離は難渋したが,完全切除した.腫瘍は最大径9cmで多房性,内容液は無色,漿液性で,病理診断は嚢胞状リンパ管腫であった.現在1年6カ月再発は認めない.
  • 熊谷 元, 濱中 喜晴, 平井 伸司, 三井 法真, 中前 尚久, 小林 平
    2000 年 61 巻 11 号 p. 2922-2926
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は, 58歳,男性.意識消失発作にて近医を受診し,脳梗塞と診断された.入院時の心電図にて心房細動を認め,心エコーにて左房に充満する左房内腫瘍を指摘されたため,手術目的にて当科へ入院となった.術前・術中の腫瘍,僧帽弁の評価に経食道心エコーを用い,両心房縦切開法にて腫瘍摘出術と左房のみのmaze手術変法を行った.病理学的に左房粘液腫と診断された.術後は洞調律に戻り,心エコー上左房径の縮小を認めた.
    粘液腫では腫瘍塞栓症の合併が問題となり,また慢性心房細動症例においても,脳梗塞の合併が問題となる.このことより左房粘液腫摘出術の際に, maze手術変法の追加や必要に応じて僧帽弁の手術を追加することは意義のあることと考えられた.
    また,左房粘液腫に対しては様々な術式があるが,術後の不整脈の発生の可能性も考慮し,手術の目的にあった術式を選択することが必要であると考えられた.
  • 宇野澤 聡, 根岸 七雄, 新野 成隆, 前田 英明, 河野 秀雄, 三室 治久
    2000 年 61 巻 11 号 p. 2927-2931
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は47歳女性.平成3年に子宮筋腫にて手術施行.平成9年に右房内腫瘍を発見され,開心術を施行した.腫瘍は下大静脈に浸潤していたため完全切除不能と判断し右房内腫瘍と下大静脈腫瘍を可及的に切除した.その後下大静脈内に腫瘍の増大を認め二期的に摘出術を施行した.腫瘍は右卵巣静脈から下大静脈に進展しており,部分体外循環使用下にその腫瘍と下大静脈腫瘍を摘出した.病理組織診でintravenous leiomyomatosisと診断された.心腔内に進展したintravenous leiomyomatosisは稀とされており,症例を呈示し若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 青木 克哲, 小笠原 邦夫, 福田 洋, 大下 正晃, 西井 博, 近藤 肇彦
    2000 年 61 巻 11 号 p. 2932-2935
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    患者は71歳女性で,近医で腹部の拍動性腫瘤を指摘され,当科へ紹介された. CT検査で最大径6cmの腹部大動脈瘤を認めた.血小板数は入院2年半前で12.0×104/mm3,入院1年前で9.3×104/mm3,手術前日には6.4×104/mm3と減少しておりPAIgGは116.4ng/107cellsと上昇していた.手術前日にγ-グロブリンを15g, 術日にγ-グロブリンを15g,血小板を20単位,術後1日目に血小板を10単位投与した. Y型人工血管で動脈瘤を置換し,術後経過は順調であった.血小板数は,術後では12.8×104/mm3, 2日目に9.7×104/mm3となり以後上昇し18日目に23.4×104/mm3と最高になり,以後減少に転じ術後10カ月目には7.0×104/mm3になった.γ-グロブリンおよび血小板を投与することにより安全に腹部大動脈瘤をY型人工血管で置換できた.
  • 花岡 孝臣, 西村 秀紀, 高砂 敬一郎, 近藤 竜一, 林 賢, 宗像 康博
    2000 年 61 巻 11 号 p. 2936-2939
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胸部CTで発見された胸膜下の腫瘤陰影に対して胸腔鏡下手術を行い,肺内リンパ節と診断された2例を経験した.
    症例1は, 72歳の男性で,検診の精査目的に胸部CT検査を行い,左S10に径7mmの腫瘤陰影を認めた.確定診断目的で胸腔鏡下手術を行った.症例2は, 64歳の女性で,咳漱の精査目的で胸部CT検査を行い,左S9に径6mmの腫瘤陰影を認めた. 3カ月後のCT再検にて,軽度の増大を認めたため胸腔鏡下手術を行った.
    画像診断上,胸膜直下肺内リンパ節と小型末梢肺癌との鑑別は,困難な場合がある.画像的に悪性が疑われる胸膜直下肺内腫瘤性病変では,肺内リンパ節も考慮すべきであるが,確定診断のためには胸腔鏡下肺生検を行うことも必要である.
  • 山中 直樹, 山田 和典, 栗田 幸男, 加藤 雅人, 藤原 博
    2000 年 61 巻 11 号 p. 2940-2943
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,男性.白内障手術の術前検査の胸部X線写真で左肺の結節状陰影を指摘され,肺結核症として治療を受け腫瘤の縮小がみられていた. 1年後の胸部X線で結節状陰影の増大と腫瘍マーカーの上昇がみられたが,細胞診では陰性であった.経気管支肺生検とCTガイド下経皮肺穿刺吸引細胞診が施行され,粘液産生を伴う腺癌が疑われた.左肺下葉切除術を行い,肉眼的に白色ゼリー状腫瘤を認め,組織学的には粘液嚢胞腺癌であった.肺原発の粘液嚢胞腺癌は悪性度が低く稀な疾患であるが,肺結核症,肺化膿症などとされ治療中の症例で臨床経過に疑問を生じた場合,本腫瘍も鑑別診断の1つとして考慮する必要がある.診断に当たって経気管支肺生検のみでは診断が困難なことが多く,経皮肺生検および穿刺吸引細胞診が有用であり,これらを積極的に行う必要がある.
  • 松橋 延壽, 河合 雅彦, 近石 登喜雄, 山森 積雄, 古市 信明, 三沢 恵一, 大橋 広文
    2000 年 61 巻 11 号 p. 2944-2947
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例60歳,女性.当院内科受診中,偶然胸部X線検査で左肺S6に腫瘤性陰影を発見された.以前より貧血を認めており原発性,あるいは転移性腫瘍を疑い消化管精査施行した.大腸内視鏡検査で上行結腸に2型の腫瘍を認め生検では結果groupVであった. 1994年7月27日結腸右半切除術施行した.病理組織学的には粘液癌, ss, 1y1, v1, n2(+)であった. 1カ月後肺S6の腫瘤は肺原発による重複癌と考え,左肺第6区域切除術を施行した.組織学的に粘液癌を認め,結腸癌による肺への転移と診断した.結腸癌肺転移例は予後が不良であり肺転移巣を切除されることは少ないが術後5年経過した現在無再発徴候を認めていない.
  • 谷村 葉子, 神谷 里明, 小川 明男, 鬼頭 靖, 松永 宏之, 松崎 安孝
    2000 年 61 巻 11 号 p. 2948-2951
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は50歳,女性.平成7年6月検診の胸部単純X線写真にて異常陰影を指摘され,以後経過観察していたが,腫瘤影が除々に増大したため,平成11年8月開胸術を施行した.右肺下葉臓側胸膜から有茎性に連続する腫瘤を認めこれを切除した.病理学的に孤立性繊維性腫瘍solitary fibrous tumor (限局性繊維性胸膜中皮腫)と診断された.本腫瘍の起源については未だ議論もあるが間葉系細胞由来との説が有力で,免疫組織学的にはCD34が高率に陽性であることがわかっている.本例でもCD34が陽性であった.
  • 城間 寛, 比嘉 淳子, 我喜屋 亮, 長嶺 信治, 上原 協, 比嘉 昇
    2000 年 61 巻 11 号 p. 2952-2956
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    横隔膜原発の脂肪腫は極めて稀である.今回われわれは,右季肋部圧迫感で受診し,手術にて横隔膜原発の脂肪腫と診断した1例を経験したので報告する.症例は56歳,男性.右季肋部圧迫感で受診した.腹部エコー, CT, MRI検査にて右横隔膜と肝臓の間に腫瘤を認めた.肝臓ないしは横隔膜原発の脂肪腫と診断し手術を行った.手術所見では右横隔膜より小指頭大の茎でつながる17×11×8cmの黄白色調腫瘤を認めた.腫瘤の茎を1.0絹糸で結紮し.切離した,切除標本の病理検査では脂肪腫であった.
  • 柴 浩明, 高橋 直人, 岡本 友好, 中里 雄一, 羽生 信義, 青木 照明
    2000 年 61 巻 11 号 p. 2957-2960
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    皮膚筋炎を合併した食道癌の1例を経験した.症例は68歳男性.平成9年1月,後頸部に紅斑が出現.次第に上下肢,体幹へと拡大し,同年6月四肢近位筋,頸筋痛,筋力低下も出現したため, 7月当院皮膚科受診. Creatine kinase, Aldolaseの高値を認め,皮疹部の生検の結果,皮膚筋炎と診断された.全身の悪性腫瘍検索を行ったところ,胸部食道に扁平上皮癌を発見した. prednisolone 40mg投与下で,右開胸開腹食道亜全摘術,胃管挙上再建術,胸腔内吻合術を施行した.摘出標本では, MtLtに4.0×4.5cmの腫瘍を認め,病理組織学的診断は, moderately differentiated squamous cell carcinoma, sm3, ly2, v1, pT1b, pN0, pM0, pStage Iであった.腫瘍摘出後Creatinekinase, Aldolaseは正常値に回復,皮膚症状軽減し prednisolone も20mg に減量できた.皮膚筋炎では悪性腫瘍の合併が多いが,食道癌との合併は少なく,悪性腫瘍摘出後に皮膚筋炎の改善を見たので報告する.
  • 太田 大介, 高木 融, 逢坂 由昭, 佐々木 啓成, 伊藤 一成, 林 幹也, 青木 達哉, 小柳 〓久
    2000 年 61 巻 11 号 p. 2961-2966
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    今回,われわれは過食が原因で胃壊死に陥った1例を経験したので報告する.症例は25歳,男性.過食後の腹痛,嘔吐を主訴に近医受診.腹部単純レントゲンで著明な胃拡張を認め胃管挿入したところ約3500mlの胃内容が吸引された.症状改善したため保存的に治療していたが,発症16日目に胃管から血液の流出を認め同日転院となった.緊急内視鏡では,胃内には凝血塊が多く, FornixとAngle対側に巨大な潰瘍を認めた.また胃全体よりoozingを認めた.出血量が80~100ml/hrと続いたため翌日,胃全摘・Rouex-Y再建術を施行した.術後は合併症もなく退院した.
  • 上原 忠大, 銘苅 正
    2000 年 61 巻 11 号 p. 2967-2970
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胃切除後の吻合部潰瘍によると思われる胃空腸横行結腸瘻の1例を経験したので報告する.症例は72歳,女性. 22年前胃潰瘍に対し幽門側胃切除術の既往がある. 1997年より時々水様便が出現し,近医受診.大腸ポリープを指摘され,開腹術を受けるが,その後も症状改善なく放置. 1999年3月,腹痛,下痢を主訴に来院.内服治療で改善せず,精査目的で入院となった.胃内視鏡検査では活動期の吻合部潰瘍がみられた.再建はBillroth-II法であったが,吻合部より続く内腔がいくつかみられ,その1つが結腸と内瘻を形成していた.注腸造影,上部消化管造影などの結果,胃空腸横行結腸瘻と診断した.残胃部分切除,横行結腸瘻孔閉鎖,胃空腸Roux-en-Y吻合術施行.術後下痢は改善し, 2カ月で体重が8kg増加,根治が得られた.
  • 居村 暁, 西井 博, 小笠原 邦夫, 近藤 肇彦, 青木 克哲, 福田 洋
    2000 年 61 巻 11 号 p. 2971-2975
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,男性. 22年前に十二指腸潰瘍にて選択的近位迷走神経切離術兼幽門輪切除, Billroth II法による結腸前胃空腸吻合術(ブラウン吻合付加)をうけている. 1998年11月に心窩部痛を主訴に当院の人間ドックを受診し精査にて残胃に癌が発見された.病変は前回手術時の吻合部口側に認め,胃切除を行った.
    迷走神経切離術(以下,迷切)後に発生する胃癌は本邦では稀であり報告例は22例しかない.われわれの施設では, 1972年から1999年の期間に395例に迷切を施行し,迷切後の胃癌発生は本症例が3例目である.この3例目の症例を報告するとともに迷切と胃癌発生との関係について文献的考察を試みた.
  • 高橋 亮, 川村 健, 奥芝 知郎, 直江 和彦, 渡辺 不二夫, 熱田 友義
    2000 年 61 巻 11 号 p. 2976-2978
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    われわれは,食道癌術後, 19年経過し,胸骨後経路で挙上した胃管に発生した胃癌の1切除例を経験したので報告する.食道癌は, 1979年12月19日に手術が行われ, Mt-Lt, pT2, pN2, pStage IIIであった.再発無く経過していたが, 1998年1月,嚥下障害を主訴に他院受診,大量下血も見られた.精査の結果,挙上胃管に癌を指摘された.胃管の挙上経路と,残存口側食道が短いことが問題であったが,本来の栄養血管を切離することも可能であるとの報告から,胸骨縦切開で右胃大網動脈を切離,胃管の口側6cmで切除した.右結腸動脈および中結腸動脈を茎とした回腸,右側結腸を用い再建し,良好な結果を得た.
  • 高橋 祐, 長谷川 洋, 小木曽 清二, 塩見 正哉, 雨宮 剛, 上原 圭介
    2000 年 61 巻 11 号 p. 2979-2983
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    慢性関節リウマチ(以下, RA)に合併した続発性アミロイドーシスによる小腸出血の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.
    患者は51歳,女性. 1993年よりRAのため近医通院中であった. 1998年11月口内炎,腹痛,下痢を主訴に当院に入院した.入院後多彩な腹部症状が出現した後,大量下血をきたし,最終的に小腸出血の診断で開腹に踏み切った.視触診で出血部位の確認ができなかったため,術中内視鏡で確認し, 80cmの空腸を切除した.切除小腸粘膜は大小不同の小隆起がびまん性に連続し,病理組織学的には広範な粘膜の欠損と粘膜下層の小動脈を中心にアミロイドの沈着が証明された.このアミロイドは免疫組織染色でAA蛋白と同定され, RAに合併した続発性アミロイドーシスと診断した.術後は1年以上にわたるTPN管理により再出血は認めていない.
  • 中神 克尚, 高橋 泰, 杉谷 一宏, 佐々木 毅, 大和田 進, 森下 靖雄
    2000 年 61 巻 11 号 p. 2984-2987
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は61歳の女性で,17年来の腹痛と腹部腫瘤を主訴に来院した.腹部CT検査で右下腹部の腫瘤に一致して, target-like sign を認めたため腸重積症と診断したが腹部腫瘤は減圧や用手整復せずに自然消失した.諸検査で器質的病変を指摘できず,特発性腸重積症と診断した.手術所見では,先進部が上行結腸におよぶ回腸結腸型順行性腸重積症で,先進部は回腸末端から50cmの部位に存在する粘膜下腫瘍であった.回腸部分切除術を施行した.切除標本では回腸に2.5×2.5×2.5cm大の粘膜下腫瘍を認め,その肛門側に襞に沿うように4mm大の多数のポリープ様病変を認めた.病理組織学的検査では脂肪腫と炎症性ポリープと診断した.過去10年間の成人腸重積症153例を文献的に考察した.
  • 福井 貴巳, 山森 積雄, 古市 信明, 三沢 恵一, 大橋 広文
    2000 年 61 巻 11 号 p. 2988-2992
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は7カ月,男児.主訴は胆汁性嘔吐と腹部膨満.現病歴は4日前より胆汁性嘔吐と腹部膨満をきたし, 1993年8月24日入院した.腹部は緊満し,著明な鼓腸を認めた.腹部単純写では拡張した小腸および鏡面像を認めた.注腸造影検査では結腸の走行異常・通過障害は認めなかった.小腸イレウスと診断し,同日緊急開腹術を施行した.拡張腸管末端部,回盲部より約20cm口側にMeckel憩室を認め,その先端にOmphalomesenteric bandの遺残を認めた.拡張した腸管はbandを軸として反時計回りに回転し, bandがMeckel憩室起始部および肛門側回腸を絞扼していた. bandを可及的臍側で切除し, Meckel憩室を含め回腸を約10cm切除し端々吻合した.
    Omphalomesenteric bandの組織所見はbandの憩室側では内腔を有する粘膜と固有筋層を認め,臍側では拡張した血管と不完全な筋層を認めた.
  • 鈴木 聡, 三科 武, 二瓶 幸栄, 山崎 哲, 登坂 有子, 松原 要一
    2000 年 61 巻 11 号 p. 2993-2997
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    イレウス管の留置が原因と思われる小腸重積症の2例を経験した.症例1は59歳,女性.胃癌,腎腫瘍術後の癒着性イレウスに対し,空腸切除術を施行.イレウス管を第6病日までsplintとして留置し,抜去後早期にイレウス状態となった.イレウス再燃と診断し開腹すると,空腸に2カ所,回腸に1カ所の腸重積を認め,用手的に整復した.症例2は72歳,男性.外傷性小腸破裂後の癒着性イレウスに対し腸切除術を施行. splint目的でイレウス管を留置中,第3病日にイレウスが再燃した. CTで腸重積症を疑い開腹すると,上部空腸が重積し,空腸切除術を施行した. 2例ともsplint用のイレウス管が原因の腸重積症と考えられた.本邦報告例24例のうち,術後のsplint目的のイレウス管による腸重積症は9例(38%)で,抜去後早期の発症が多かった.イレウス管を術後イレウスの予防目的で使用する場合,本症の併発を考慮にいれた慎重な経過観察が必要である.
  • 中村 康子, 今津 浩喜, 桜井 洋一, 落合 正宏, 船曵 孝彦
    2000 年 61 巻 11 号 p. 2998-3002
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は82歳女性.平成7年12月に産婦人科にて子宮体部腫瘍の診断で手術を施行されたが,周囲への浸潤が強く切除不能と判断されたため試験開腹にとどまった.術中の腫瘍生検ではspindle cell tumorであった.以後婦人科外来にて経過観察をしていたが,腹痛と腹部圧迫症状が出現したため当科に入院した. CTでは腫瘍は13×11cmの大きさであり,上部消化管造影で小腸と腫瘍は瘻孔を形成していた.平成11年3月バイパス目的に手術を施行したが,腫瘍は子宮由来ではなく容易に子宮と剥離できたため,小腸150cmを含めて腫瘍を摘出することが可能であった.摘出標本では肉眼的に腫瘍は小腸より発生しており,免疫組織学検索では, smooth muscle actin, vimentin, c-kitが陽性, CD34は陰性であり,小腸原発GIST (gastrointestinal stromal tumor) と診断した.
  • 宮本 憲幸, 塩野 恒夫, 関下 芳明, 藤森 勝, 真名瀬 博人, 宗村 忠信, 山口 潤
    2000 年 61 巻 11 号 p. 3003-3007
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は70歳男性. 1997年10月頃より貧血症状出現し近医を受診.消化管精査にて,小腸に腫瘤を認め,当科紹介となる.血管造影にて腫瘍濃染像を,腹部造影CTにて造影される腫瘤像を認めた.また腸回転異常が疑われた.小腸腫瘍との術前診断にて手術施行した.空腸に粘膜下腫瘍様の最大径6cmの腫瘍を認め空腸部分切除を施行した.小腸全体が腹腔内右方を占め虫垂は左上腹部に位置し腸回転異常を伴っていた.病理組織学的所見,免疫染色の結果,空腸原発malignant GIST uncommitted typeと診断された.近年の免疫組織学的検索の発達により, GISTの報告例が増加しているが,消化管出血をきたした空腸原発のGISTを経験したので報告した.
  • 若原 正幸, 安江 幸洋, 安江 紀裕, 久野 壽也
    2000 年 61 巻 11 号 p. 3008-3012
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    虫垂に限局したCrohn病は非常に稀な疾患で,本邦では11例の報告をみるにすぎない.今回,われわれは虫垂Crohn病と診断された1例を経験したので報告する.症例は27歳の男性,下腹部痛を主訴に1999年10月14日当科を受診した.受診時、右下腹部に圧痛、筋性防御を認めた.腹部超音波、腹部CT検査にて回盲部に腫大した腫瘤陰影を認め,急性虫垂炎による炎症性腫瘤と診断し,緊急手術を施行した.虫垂は60×30mm大に著明に腫大しており,虫垂悪性腫瘍と診断し, D2リンパ節郭清を伴う回盲部切除術を施行した.術中小腸,大腸には異常所見は認めなかった.病理組織学的には,虫垂壁は好中球とリンパ球の全層浸潤と線維化を伴う全層性炎症のため著明に肥厚し, Langhans型巨細胞からなる非乾酪性肉芽腫が認められ,虫垂Crohn病と診断された.術後経過は良好で, 6カ月を経た現在も再発徴候は認めていない.
  • 木村 豊, 黒川 英司, 加藤 健志, 林 太郎, 後藤 正志, 浦野 尚美, 谷川 隆彦, 遠藤 和喜雄, 山本 仁, 福田 一郎
    2000 年 61 巻 11 号 p. 3013-3016
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    虫垂憩室炎は比較的稀な疾患である.術前診断は非常に困難で,急性虫垂炎として手術される場合が多い.
    今回,虫垂憩室内に複数の魚骨や蟹の爪を含んだ虫垂憩室炎を経験したので報告する.症例は38歳の男性で右下腹部痛で来院し,理学的所見,腹部超音波検査,腹部CT検査で急性虫垂炎と診断し虫垂切除術を行い,切除標本で虫垂憩室炎と診断した. retrospective に検討すると,腹部超音波検査で憩室炎に特徴的な所見を呈していた.
    急性虫垂炎を疑う症例に対して,虫垂憩室炎を念頭に置き注意深く検索することにより術前に診断できる可能性があるものと考えられた.
  • 山田 忠則, 藤村 昌樹, 平野 正満, 木下 隆, 渡田 正二, 城塚 美奈子
    2000 年 61 巻 11 号 p. 3017-3021
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,男性.下血と出血性ショックのため他院に入院した.右腸骨動脈瘤の腸管への穿破と診断され,手術目的にて当科転院となった.転院後直ちに右総腸骨動脈根部で血管塞栓術を施行し出血をコントロールし,循環,呼吸状態を改善したのち手術を行った.術中所見にて右総腸骨動脈瘤-虫垂瘻と診断,動脈瘤および虫垂切除術を施行した.一般に動脈-腸管瘻は稀であり,早期診断が難しいこと,血液内への感染を伴うことから予後不良とされている.虫垂への穿破は本邦では自験例を含む4例が報告されるのみである.今回,われわれは血管塞栓術および手術にて救命し得たので報告した.
  • 堀場 隆雄, 山内 晶司, 佐藤 榮作, 呉 成浩
    2000 年 61 巻 11 号 p. 3022-3025
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    腸回転異常症は新生児期に発見されることが多く,青年期以降に発見されることは稀である.今回われわれは長期間にわたる腹部症状の経過の後,青年期に症状が増悪し,各種画像検査から術前診断し得た腸回転異常症に中腸軸捻転を合併した1例を経験したので報告する.
    症例は17歳男性.腹痛を主訴に当院を受診.注腸検査にて左上腹部に大腸の偏在を認め,腹部CT検査ではSMV rotation signとwhirlpool signを認めた.腸回転異常症の診断にて開腹するとnonrotation typeの腸回転異常症で2カ所に腸軸捻転を来していた.腸軸捻転は各々が時計方向に360度捻れていた.捻転を整復した後, Ladd手術を施行,虫垂切除を追加した.術後腹部症状は消失し経過は良好である.
    腸回転異常症および中腸軸捻転は稀な疾患であるが,各種画像検査により特徴的な所見を得て診断することが可能と考えられた.
  • 青山 浩幸, 菊山 成博, 大山 廉平, 折笠 英紀, 前田 耕太郎
    2000 年 61 巻 11 号 p. 3026-3030
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    結腸内分泌細胞癌は悪性度が高く,早期に他臓器転移をきたし,高度に進行した状態で発見され,きわめて予後不良である.われわれは異時性多発結腸早期癌と上行結腸内分泌細胞癌(mp, ly0, v0, n0)に根治術を行い,術後2年5カ月の現在再発を認めない1例を経験した.内分泌細胞癌と早期結腸癌との合併は本邦において検索し得た限り報告はなく,稀な症例と思われるので報告する.症例は69歳の女性で,横行結腸早期癌で横行結腸切除術の既往がある.術後定期検査の下部消化管内視鏡検査で,上行結腸にIIa型早期癌と,その口側上行結腸に約2cm大の黄色調で陥凹を伴う隆起性病変(生検:腺腫)を認めた.口側腫瘍は注腸造影検査などの所見より進行癌も否定できず外科的切除を施行した.術後病理診断にて, IIa病変は高分化腺癌,口側腫瘍は内分泌細胞癌と診断した.
  • 小西 滋, 岸川 博隆, 川村 弘之, 葛島 達也, 柴田 康行
    2000 年 61 巻 11 号 p. 3031-3036
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は80歳の男性で,来院時に右下腹部に手拳大の腫瘤を触知した.注腸X線検査,大腸内視鏡検査で盲腸から上行結腸に存在する粘膜下腫瘍が最も考えられた.腫瘍マーカーはCEA:10.Ong/mlと高値を示した.切除標本肉眼所見で腫瘍は8cm大,上行結腸から盲腸にかけて存在し,ほぼ正常粘膜に覆われていた.病理組織所見では腫瘍はほとんどが正常粘膜に覆われ,一部肉眼で顆粒状の変化を認めた部位にのみ粘膜の欠損がみられ癌巣が露出していた.診断は低分化腺癌, INF-β, ly2, v1, ew(-), ow(-), aw(-), P0H0n1siM(-) stage IIIaであった.また,腫瘍胞巣間に強い好中球浸潤がみられた.粘膜下腫瘍様の形態を呈した大腸癌は現在までの報告例が18例と稀であるが,今回特徴的な病理組織学所見を備えた貴重な1例を経験したので,その発育進展様式,病理組織学的特徴について若干の文献的考察を加え報告した.
  • 河島 秀昭, 原 隆志, 石後岡 正弘, 樫山 基矢, 高梨 節二, 細川 誉至雄
    2000 年 61 巻 11 号 p. 3037-3041
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    肛門部に発生する無色素性悪性黒色腫は,極めて稀な疾患であり早期に血行性,リンパ行性に全身に転移をきたすため,予後はきわめて不良である.今回われわれは,肛門管に発生した無色素性悪性黒色腫の1例を経験したので若干の考察を加えて報告する.症例は, 85歳男性.肛門痛と出血を主訴に来院した.肛門管に径1cm大の腫瘤を認め局所切除を行った.無色素性悪性黒色腫と診断され広範囲局所切除を追加した.その後,肺,皮膚,肝に遠隔転移をきたし3年10カ月で死亡した.この間局所再発は認めず良好なQOLが保たれた.
  • 荒木 政人, 山口 広之, 林 徳真吉, 辻 孝, 中越 享, 綾部 公懿
    2000 年 61 巻 11 号 p. 3042-3045
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は49歳男性.人間ドックの腹部超音波で膵体部に嚢胞性病変を指摘され,精査となった.CTでは,早期より造影効果のある径約4×3cmの嚢胞性腫瘍であった. MRIでは,辺縁平滑な2胞性の嚢胞でdynamic studyでは嚢胞壁は均一で著明な造影効果を認めた.膵体部原発の非機能性膵内分泌腫瘍またはsolid and cystic tumor の診断のもと, 1999年9月7日幽門輪温存膵島十二指腸切除術を行った.膵頭部から体部にかけて膵上縁に突出するような径4.3×3.3cm大の赤褐色の表面平滑な腫瘤を認め,内部は壊死性出血により嚢胞化していた.病理診断は non-functioning islet cell tumor であった.非機能性膵内分泌腫瘍は血流豊富であり嚢胞化することは少ないが,巨大化してくると嚢胞化をみることは多いとされる.本例のように最大径が4.3cm と小型でありながら嚢胞化した膵内分泌腫瘍は文献的にも稀であった.
  • 佐藤 俊, 川口 信哉, 新谷 史明
    2000 年 61 巻 11 号 p. 3046-3049
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    血清CA19-9高値を示した脾嚢胞の1例を経験したので報告する.症例は52歳の男性,心窩部痛を主訴に近医受診,検査にて脾嚢胞を指摘された.当院で行った腹部CT所見上嚢胞は10×15cm大,さらに血液生化学検査ではCA19-9が146.1U/mlと高値を示していたが一時外来フォローアップされていた.しかし, 4カ月後CA19-9が485.2U/mlと著明に上昇したため,悪性病変も否定できないとのことで手術目的に入院となった.術中所見では嚢胞壁に膵尾側が癒着していたため膵尾側切除を行い嚢胞を摘出した.病理所見上嚢胞壁は一部扁平上皮にて覆われており, CA19-9の免疫特殊染色で同部に一致して陽性所見を認めた.血清CA19-9は第10病日で正常化しその後の上昇も認めていない.今回の症例のようにCA19-9高値を伴った脾嚢胞の症例では悪性病変の存在も念頭に置き積極的に手術を行うべきと考えられた.
  • 唐澤 幸彦, 萩池 昌信, 坪井 有加, 岡野 圭一, 森 誠治, 合田 文則, 若林 久男, 臼杵 尚志, 前場 隆志, 前田 肇
    2000 年 61 巻 11 号 p. 3050-3054
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は50歳,男性.右上腕に発生したfibrosarcomaに対し右肩甲下離断術を施行後,化学療法中にCT,腹部超音波検査で右副腎に腫瘍を指摘され,転移性副腎腫瘍と診断された.骨シンチグラフィーでは骨転移も認められたが,腫瘍が急速に増大しているため,右副腎摘出術を施行した.摘出標本では,内部に凝血塊を有する5.4×4.4cm大の腫瘍を認め,病理組織検査でfibrosarcomaの副腎転移と診断された.転移性の副腎腫瘍は原発性の機能的腫瘍と異なり,症状に乏しいことから,進行例が多く,生前に発見され,切除し得る症例は少ない.また, fibrosarcomaの副腎転移は非常に稀と考えられる.転移性副腎腫瘍では原発巣のコントロールができていて,他臓器に著明な転移を認めなければ,積極的な切除により予後が期待できると考えられる.
  • 佐々木 啓成, 鈴木 敬二, 片柳 創, 高木 融, 青木 達哉, 小柳 〓久
    2000 年 61 巻 11 号 p. 3055-3059
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は59歳男性,平成9年3月Type 2進行胃癌の診断にて胃全摘術施行.病理組織学的にT 2 NOHOPOCYXMO Stage IBであった.また術後4週目に右外鼠径ヘルニアにてヘルニア根治術施行した.胃癌手術22カ月後,腫瘍マーカー上昇し,腹部CTにて大動脈周囲のリンパ節転移を認め全身化学療法施行.胃癌手術24カ月後,両側鼠径部の索状物と右鼠径から陰嚢にかけクルミ大に腫大した有痛性の腫瘤を自覚するようになった.生検の結果,腺癌であり,約2年半前に切除された胃癌の組織像と形態的な類似点が多いため胃癌からの陰嚢転移と診断し全身化学療法施行した.化学療法後,右陰嚢部痛軽快し現在経過観察中である.
  • 寺山 裕嗣, 山本 康弘, 松田 年, 菊地 一公, 山口 聖隆, 小林 達男
    2000 年 61 巻 11 号 p. 3060-3065
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は16歳女性で1995年3月15日,腹部X線にてfree air認め急性虫垂炎の診断で,腹腔鏡下虫垂切除施行したが穿孔部を発見できなかった.同年3月18日,腹腔内膿瘍を認め開腹手術施行.横行結腸に穿孔が存在し,同部位に癌腫様の腫瘍を認め切除した.その後1997年6月6日,左上腹部に触知した腫瘤に対し開腹術施行したが,小腸腸間膜に巨大な腫瘤を形成し切除不能であった.組織学的にデスモイド腫瘍と診断された.デスモイド腫瘍はホルモン依存性腫瘍であることが知られており,当科では同じホルモン依存性腫瘍である乳癌のhigh risk群の治療であるgoserelin acetate, tamoxifen, fadr-ozole hydrochlorideの三剤併用療法によって延命効果を認めた.デスモイド腫瘍の治療は外科切除が第一選択とされているが,再発率の高さからホルモン療法も考慮すべきであると考える.
  • 仲田 裕, 石井 龍宏, 冨岡 憲明
    2000 年 61 巻 11 号 p. 3066-3068
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    内ヘルニアは稀な疾患であり術前診断が困難であるが,しばしば絞扼性イレウスで発症する.今回われわれは大網の異常な裂孔に小腸が嵌頓して,絞扼性イレウスをきたした大網裂孔ヘルニアの1例を経験したので紹介する.症例は58歳の男性.イレウスにて入院治療中に腹痛が増強し,筋性防御を認めるようになったため当院に転院,絞扼性イレウスと診断し緊急手術を施行した.開腹するとトライツ靱帯より約80cm肛門側の回腸約70cmが,直径約5cmの大網裂孔の背側から腹側に脱出し,大網裂孔で絞扼していた.回腸は発赤していたが壊死は認めず,大網切開のみ施行し絞扼を解除した.本例は腸管壊死に陥る前に絞扼性イレウスと診断できたが,この疾患は短時間のうちに腸管壊死をきたし重篤な状態に陥る場合があるので.十分な注意を払わなければならない.
  • 田中 良太, 吉見 富洋, 朝戸 裕二, 根本 一成, 植草 義史, 板橋 正幸
    2000 年 61 巻 11 号 p. 3069-3074
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は70歳の男性,腹部膨満感を主訴に入院した.左肋骨弓下に約10cmの弾性硬な腫瘤を触知した.胃透視および内視鏡では胃体上部大彎後壁側に圧排所見を認め,腹部CTでは左上腹部に径16cm大の腫瘤を認めた.巨大腹腔内腫瘍の診断で手術を施行した.開腹時大網および後腹膜に腹膜播種性転移を認めた.胃体部後壁に横隔膜浸潤を伴う巨大な腫瘤を認め,胃全摘, D2郭清を施行した.標本重量は3141g,中心部に出血と壊死を認めた. HE染色で胃平滑筋肉腫と診断,免疫染色で筋原性マーカーのSMA, desmin が陰性,神経原性マーカーのS100蛋白, NSEが陰性でCD34が陽性でありgastrointestinal stromal tumor, uncommitted type と診断した.術後10カ月を経過した現在,多発性肝および腹膜転移再発を認めた.
  • 中瀬 有遠, 北川 昌洋, 海老原 良昌, 安岡 利恵, 増山 守, 加藤 誠, 渡辺 信介
    2000 年 61 巻 11 号 p. 3075-3079
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,比較的稀な腫瘤形成型の後腹膜線維症の1例を経験した.
    症例は55歳男性.検診の腹部超音波にて左腎上極の腫瘤陰影を指摘され,精査のために当院を受診した.来院時,特に自覚症状を認めず,身体所見に異常を認めなかった.腹部CTでは軟部組織陰影として描出され, MRIではT1強調画像, T2強調画像で低信号強度を示し,線維性組織であることが疑われた.悪性腫瘍を否定し得ないため治療と確定診断をかね摘出術を行った.病理組織診断にて腫瘤形成型の特発性後腹膜線維症と診断した.外来にて経過観察中であるが,現在のところ再発を認めていない.後腹膜腫瘤の診断の際に,本症も念頭におく必要があると思われた.
  • 西 宏之, 仲原 正明, 城戸 哲夫, 山西 博司, 中尾 量保, 辻本 正彦
    2000 年 61 巻 11 号 p. 3080-3084
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    極めて稀な後腹膜原発明細胞腺癌の1例を報告する.症例は58歳,女性.既往歴は44歳時に子宮癌にて子宮全摘術,両側付属器摘出術を施行.現病歴は貧血精査のため施行した注腸造影にて上行結腸癌を指摘. CT検査で8×6cm大の骨盤内腫瘍を認め,経直腸針生検にて腺癌と診断.平成10年12月16日,回盲部切除および後腹膜腫瘍摘出術を施行.腫瘍は超手拳大で,直腸間膜,腟断端,膀胱と強固に癒着していたが,周囲臓器を合併切除せずに摘出し得た.摘出腫瘍は10×9×7cm大,充実性で,一部に嚢胞成分の混在を認めた.病理組織学的に,大腸癌は高分化腺癌,m, nOであり,後腹膜腫瘍は明細胞腺癌と診断された.組織発生学的に卵巣の明細胞腺癌と同一由来と考え,卵巣癌に準じた化学療法(カルボプラチン,パクリタキセル)を施行し,術後14カ月の現在無再発生存中である.
  • 金澤 伸郎, 平島 得路, 樋口 芳樹, 長尾 玄, 岩崎 晃太, 黒岩 厚二郎
    2000 年 61 巻 11 号 p. 3085-3089
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    過去文献的に10症例しか報告のない,極めて稀な動脈硬化性の真性腋窩動脈瘤の1手術例を経験したので報告する.症例は外傷,松葉杖の使用などの既往歴を持たない76歳男性.主訴は左腋窩の拍動性腫瘤. 5, 6年前から気付いており,次第に増大,来院時には径25mmとなった.末梢血管超音波検査で左腋窩に血栓形成を伴わない16×22mm大の嚢状動脈瘤を認めた.血管造影でも左腋窩動脈第3部に径25mm大の動脈瘤を認めた.その他の領域に動脈瘤形成,径の不整などの所見は認めず孤立性と考えられた.手術時,動脈瘤は径20mm大,周囲の炎症反応は軽度であったが,正中神経と近接していたため,瘤壁は残した.瘤の両側で動脈を切断,血行再建は径6mm ring付きPTFE graftを用いた.病理組織検査所見上,内弾性板の一部断裂,中膜の破壊を伴っており,動脈硬化性の病変と考えられた.術後経過は良好,術後12病日で退院となった.
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